【ロンドン=若月美奈通信員】16~17年秋冬ロンドン・メンズコレクションでプレゼンテーションを行った新進ブランドは、身の回りのなにげない風景、故郷や遠い記憶の中にある思い出といった、パーソナルなものに着想を求めた。老舗ブランドや実力派デザイナーは軽やかにシグネチャーをアップデート。肩の力を抜いたのびのびとしたクリエーションが心地よい。
冬の気分をカラフルなデザインで一掃/アレックス・ムリンズ
アレックス・ムリンズは薄暗くうっとうしい冬の気分をカラフルなデザインで一掃する。バスを待つ退屈な時間に目に入ってくる日常から発想を広げた新作は、ビルボード広告をイメージした人物写真のコラージュプリントと切りっぱなしや大胆なフォルムのブルーデニムを軸に、カスタマイズ風のデザインを揃えた。転写プリントのコートは、テーブルクロスに使われるビニールコーティングしたコットン地で作った防水ウエア。
エドワード・クラッチリーは故郷ヨークシャーのカントリーサイドに目を向けた。カシの葉柄やしっとりとしたブラウン、グリーン、ネービーを多用し、英国的なエレガンスを探る。ヨークシャーのファインウール、英国最古のカシミヤ工場の生地、ランカシャーやスコットランドのニットなどえりすぐりの英国素材を使い、王室御用達メーカーでバッジやエンブレムを製作。帽子は世界最古の帽子店、ロック&コーのもの。もっとも、げたを履かせたオリエンタルスタイルなど癖のあるカジュアルウエアが得意のクラッチリーとあって、最終的にはエスニックなスパイスを利かせたスポーツカジュアルに落とし込まれている。ボックスシルエットのジャケット、ボクサーのガウンのようなショール、サロペットパンツがキーアイテム。