スターダムにのし上がる新人は、デビューから抜きん出た才能と個性で、その他大勢とは明らかに違うパワーを放っている。ソフィア・ウェブスターの初めてのプレゼンテーションを見たとき、久しぶりにそのパワーに引き寄せられた。いや、それ以前にあめ玉のような髪飾りがついた招待状を受け取った時から、この人は大物になるかもしれないという予感がした。
ソフィア・ウェブスターの「ガーリークチュール」
モデルを使って幻想的に見せ
最近はモデルを使ったショーやプレゼンを行う靴やバッグのデザイナーが増えているが、13年春夏のデビュー当時は珍しく、着せ替え人形のように大きな箱の中に入ったモデルがずらりと並ぶそのファンタジックなプレゼンは衝撃的だった。作品もデビュー作とは思えない完成度の高い靴とバッグ。以来毎シーズン、テーマ性の強い見ごたえのあるソフィアのプレゼンは、ロンドン・コレクションに欠かせない存在となっている。
当初、なぜプレゼンで見せるのかを問うと、「その方がいいから」と一言だけ。ポートレート撮影には積極的だが、インタビューはほとんど受けない。言葉よりビジュアルで勝負といった印象が強い。
チョウや羽根、キャッチフレーズが書かれた吹き出しをシグネチャーにした靴やバッグは、キャンディーボックスをひっくり返したようにガーリーでポップなデザインでありながら、著名ラグジュアリーブランドに引けを取らない高級感がある。ハイヒールのイメージが強いが、フラットシューズやスニーカーもある。
85年生まれの31歳。大学でファインアートを専攻したが靴に目覚め、靴の名門コードウエイナーズ・カレッジを経て王立芸術大学(RCA)に進学。ニコラス・カークウッドのアシスタントを経て、12年にブランド設立した。13年には英国ファッション大賞の新人アクセサリーデザイナー賞を受賞。世界200店舗で販売している。
今年3月には英国ファッション協会とヴォーグ誌による「ファッションファンド」を受賞し、5月には今注目のラグジュアリーファッション街、マウントストリートに路面店もオープンした。と言っても、周囲の著名ブランドとはちょっと違う、こぢんまりとしたリビングルームのような店。
「ウェブサイトやSNS(交流サイト)を通じて私の世界に共感してくれる人々と、実際に触れ合う空間を持つことは夢でした」
一等地でありながらも、1本通りを入った目立たない立地というのも、華々しくビジネスを広げているようで、常に地に足のついた慎重さも見せるソフィアらしい選択だ。