5月上旬、「ルイ・ヴィトン」と「ディオール」が16年クルーズコレクションを発表した。パリで発表するメーンコレクションに対し、クルーズコレクションは発表の場所もニュースのひとつ。今シーズンはいずれも、自然の中にある建築を舞台に選んだ。
ルイ・ヴィトンが2回目のクルーズコレクションに選んだのは、カリフォルニアのパームスプリングス。50年代と70年代にアメリカのモダニズム建築が花開いた場所だ。会場となったのは、モダニズム建築を代表する建築家ジョン・ロートナーが設計した邸宅。曲線的でフューチャリスティックな建物からは、コーアチェラ・バレーが一望できる。自然が醸し出す解放感と、未来的な建築のクリーンなムードが同居する。
コレクションは、会場と同様にコントラストが際立つモダンなルックに仕上がった。メーンとなったのはリラックス感のあるマキシ丈のスカートスタイル。タンクトップやブラウスと、すとんとしたマキシスカートのセットアップが勢揃いした。
ヘッドフォンで音楽を聴きながら、スニーカーで軽快に歩くストリートテイストのスタイルに、力強さをプラスするのはグラディエーターの要素。ウエストにはアイレットを飾ったクロスベルト。肩を覆うメタル飾りやウロコ状に飾ったレザー飾りなど、甲冑(かっちゅう)をほうふつさせるディテールも随所に飾られる。自然に溶け込むカーキやベージュがキーカラーになった。
ディオールは、フランスのカンヌ近郊にあるピエール・カルダン氏の別荘「パレ・ビュル」で発表した。球体や円形をポイントにした建物は、大地と空と海をひとつに結ぶように設計されている。屋内外を使って新作を披露した。
コレクションは、自然のエネルギーが感じられるような若々しいデザインが特徴だ。キーアイテムはミニドレス。裾がリズミカルに動くミニドレスやフレアラインを描くエプロンドレスなど、ウエアラブルなルックが充実する。柄は、15~16年秋冬コレクションに見るようなレパード柄をカラフルに描いたり、アブストラクト柄がシャイニーなパステルトーンで彩ったり。メゾンの職人技を生かしてかぎ針編みやスモッキング、パッチワークといった手仕事も多く使われている。