【連載】新井ルミネ社長×寺田サマンサ社長㊦

2015/05/07 09:29 更新


共に創る~挑戦が感動を与える源に

「沈滞」への危機感

新井良亮ルミネ社長
新井良亮ルミネ社長

 ──企業が成長するには人材の育成・活用がますます重要だ。

 新井 お客様のニーズが猛スピードで変化する中で、次に向かうためには社員のパワー、能力を十分に生かさなければならない。人材を育成し、活用しなければ、当社のような不動産賃貸業も不動産「沈滞」業になってしまう。

 当社が行う店舗の入れ替えは単なる「リーシング」ではない。業種、業態の開発だ。「クリエーター」「コーディネーター」「デザイナー」「プランナー」としての四つの機能を満たす仕事をしなければならない。

 そのため、入社1年目の社員を対象に、ニューヨーク視察研修を行っている。物づくりの難しさやその現場の方々の思いを社員に感じてもらうため、国内産地の視察研修も実施している。最近は日本の物づくりの発信を通じて、国内産地の活性化につなげるプロジェクト「ココルミネ」を各館で行い、日本の若手・新進デザイナー、クリエーターの育成を目指した活動「ルミネ・ザ・カルチェラ」も積極化している。こうした取り組みを通じて、社員が育ち、今回の共同開発ブランド「アンドクチュール」にも生かされた。

 寺田 ファッションビジネス(FB)はお客様に感動と勇気を与える産業だ。その源は仕事をする人たちのチャレンジであり、そのことを通じて人は成長する。

 アンドクチュールの開発は私が先頭には立ったが、アパレル部隊全員で取り組んだ。(1号店がオープンする)1週間くらい前から、社員の元気が増した。私自身もやっていて楽しかったし、1号店オープン前はわくわくし、緊張もした。他企業と組み、新しいことにチャレンジすることで活力が生まれ、人も育つと思う。

企業同士の「思い」

寺田和正サマンサタバサジャパンリミテッドグループ会長兼社長
寺田和正サマンサタバサジャパンリミテッドグループ会長兼社長

 ──今後、他企業との協業が新戦略の柱になるのか。

 寺田 当社はグループとして世界で勝負できる日本発ブランドを育成したいと考えており、協業はその戦略の一つだ。アンドクチュールも2年くらいのうちに海外展開したい。今後、ルミネ以外を含め、色々な取り組みができればと思っている。

 大切なのは組む企業同士の「思い」がつながるかどうかだ。昨年秋に三越伊勢丹との協業で立ち上げたハイエンドのレディスバッグブランド「ラプリュム・サマンサタバサ」も、三越伊勢丹と思いでつながったからこそできた。

 新井 今回の協業は四つの機能を満たした仕事のモデルケースだ。今後の当社の方向性を示す試金石になる。これを契機に、協業に限らず、様々な新しい取り組みにチャレンジする。来春にJR東日本が新設する新宿駅新南口ビルに新館を開業する。国内独占出店契約を結んだ米ピザレストラン1号店を入れるなど、新しいコンセプトを盛り込んだ施設だ。当社もこれを契機に、世界への発信を強めていきたい。

 ──FB企業に求められることは。

 寺田 今のお客様は本当に欲しい物しか買わない。「安いから」ではなく、わくわくする物を求めている。システム化してしまった今の業界では、こうしたニーズに対応できないし、業界全体の苦しさはここにある。ここを変えていかなければ。

 新井 ファッションは常にエッジが利いていなければならない。そのためには、ゼロからの発想で新しいことにチャレンジしなければだめだ。当社もそうした企業と運命共同体として取り組みたい。

(繊研 2015/03/12 日付 19196 号 1 面)



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