【素材イノベーター⑦】高橋練染 制菌・防臭技術

2018/06/24 06:30 更新


 高橋練染のココロケア事業が注目されている。プリントの整理仕上げ加工の本業の技術、ノウハウを生かした制菌、防臭の事業で、多彩な分野で委託加工、独自の商品開発、販売が軌道に乗ってきた。アジア市場での展開も進行し始めている。

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新薬剤を開発

 ココロケアは、特殊な技術で銀をナノ化させてプラスイオンを発生させることで、黄色ブドウ球菌や白癬(はくせん)菌、サルモネラ菌、モラクセラ菌などの悪臭の元となる菌を根源から絶つ。本革や木材以外のほとんどの素材に加工でき、効果は半永久的に持続し、洗濯しても効果は落ちない。濃度の変化で様々な分野の商品に対応できる。15年4月には病院や介護分野などの特定用途にも対応できるSEK(品質保証マーク)の赤ラベルを取得、取り組む市場が加速度的に広がった。

 5年前から開発を始め、3年前にスタートした当初はマスクやタオル、スプレー、靴のインソール、靴下など小物雑貨分野が中心で、独自開発した製品がドラッグストアやホームセンターなどに受け入れられた。16年には2000店強まで取り組みが進んだ。その後、ユニフォームや資材用テキスタイルの委託加工、OEM(相手先ブランドによる生産)、ダブルネームでの製品展開と拡大している。昨年初めには、より制菌性を高めた「進化銀」と、制菌性と消臭性を強めた「デオファクター」の二つの薬剤を開発した。これを用途に応じて使い分けることで、効率の高い生産が可能になり、展開用途も広がった。

 昨年後半から衣料テキスタイルでの委託加工が急速に広がり始め、大手の百貨店アパレルやセレクトショップ、スポーツブランドなどとの取り組みが増えている。今年1月以降、衣料用テキスタイルだけで、10万メートルに迫る委託加工をこなした。寝具、寝装、リビング、インテリア、介護分野などの大手企業との取り組みも始まっている。

多彩な商品に対応できるココロケア

本業継承のために

 京都の地場産業の一つであるプリント生産は、厳しい状況が続いている。バブル崩壊後、プリント加工は海外に移転するケースが急増し、この25年間で京都のプリント生産量は最盛時の10分の1を割り込む。捺染工場の倒産、廃業も相次ぎ、整理仕上げ工場も最盛時は20社を数えたが、今や主力として生産しているのは数社のみ。

 高橋練染は残った数少ない整理加工場で、メイド・イン・ジャパンのプリントの需要促進を目指し、質感や風合いを高め、機能性のある様々な技術を開発し、提案してきた。これにより京都だけでなく、他産地からの加工依頼も増え、生産は安定推移している。しかし、アパレルの海外生産の流れは一段と進み、蓄積してきた京都ならではのプリント、加工を継承し、発展させる上では現状のままでは厳しいとの意識から新たな柱事業を模索し、ココロケアの展開に至った。町工場の1企業が研究者を巻き込んで新たな薬剤を開発し、事業展開するための投資は大きな負担だった。京都府や市の助成金などを得たが、2年近い開発は「我慢と執着の時間だった」という。

 現在、ココロケアは日本だけでなく、中国での委託加工やECアパレルとの取り組み、インドネシアでの委託加工などに広がり始めた。中国に続いて今年1月にはインドネシアに現地法人を設立。日本から薬剤を送り、中国、インドネシアで加工する。日系企業のの現地調達の要望に応えると同時に、現地の内販市場での委託加工や製品販売などでも本格的な取り組みが進展している。二つの加工・販売拠点を核に、アジア全域でのビジネスを視野に入れている。

(連載おわり)



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