なじみのジーンズリペアショップがやけに忙しい。かつては穴開きの修理や裾上げ程度なら持ち込んだ当日中に仕上げてもらえたが、今は開店時間の正午前に修理依頼の客が行列を作り、仕上がりまで数週間待つことも珍しくない。
ビンテージジーンズに欠かせないチェーンステッチ用の古いミシンを器用に操るベテラン店長がいるので、マニアックなデニム好きには評判の店だ。何度目かの古着ブームに乗って、一気に客層が広がった。
自宅に眠る年代物を久々に引っ張り出した大人と、古着の人気モデルの復刻品を買った若年層。その双方から注文が増えているのが、フロントポケットの内袋「スレキ」のリメイクだ。
50~70年製のジーンズはスマートフォンの登場を想定していないので、スレキが浅くて小さい。スマホの普及とともに古着のフロントポケットの容量を広げる注文が増えたわけだが、ダメージ補修や裾上げに比べてスレキを大きくするリメイクは工程が多く、手間もかかる。
さらに困るのは、持ち込みの多い復刻品やレプリカが「新品でも古着の仕様を忠実に再現するからスレキが小さい」ことだ。ポケットのリメイクの注文が増えて作業時間が延び、残業が増えたリペアショップの店長。「せめて復刻品とレプリカくらい最初から大きめのスレキにしてくれたら」とため息をつく。
