【ミラノ=小笠原拓郎】16~17年秋冬ミラノ・メンズコレクションは、前シーズンのトレンドとなった〝女々しい男〟から一転して、マスキュリンを背景にしたエレガントなスタイルが広がった。ベルテッドコートにスーツやセットアップといったマスキュリンを強調したアイテムに、素材やディテールで変化をつける。
マスキュリンのエレガンス セーラースタイルを再構築/プラダ
ニック・ケイブ&バッドシーズのメランコリックな歌声を背景に、プラダがロマンティックなコレクションを見せた。ベースとなるのはセーラーのスタイル。そこに再構築の要素を取り入れて変化を作る。
コートやジャケットのバックには小さなセーラー襟がちょこんと付き、スリーブはひじから袖にかけて切り替えやアップリケが飾られる。白いシャツにはローマの騎士が戦うような柄やおとぎ話を思わせる柄が描かれる。オーバーサイズのシャツは、襟がずれたりカフスがはずれたりといったディテール。ツイードタッチのコートやジャケットには、前立てと襟だけのパーツのようなインナーアイテムを組み合わせる。
インナーアイテムが、襟だけアウターの一部となるように見えるのが面白い。セーラースタイルに今っぽさを持ち込むのは、ほとんどテーパーが利いていないクロップトパンツのフォルムと裾上げのバランスにある。前シーズンの女々しい男から一転して、マスキュリンの王道にプラダらしい少年らしさを加えて見せた。スカラップ柄をマルチカラーで編んだカーディガンも、かわいいバランスに仕上がった。
ボッテガ・ヴェネタは縦長のシルエットを生かしたエレガントなラインを揃えた。カシミヤフランネルの柔らかなジャケットは長い着丈がポイント。ボンディングレザーの膨らみのあるコートは、その風合いとウエストでマークしたベルトで立体感を強調する。
縦長のシルエットを浮かび上がらせるのは、フリンジ飾りの長いストール。エレガントなスタイルをコンサバに見せないのは素材の使い方にある。陰影のあるウールチェックをジャケットやシャツに仕立て、タイトなレザーパンツをコーディネート。
コットン・レーヨンのベルベットタキシードは、その光沢が独特で動きに合わせてむらのある光りを放つ。いくつものチェック柄が重なるように見える生地、ブークレヤーンを混ぜたようにチェックの上に影が落ちる生地など、オリジナリティーのある素材が新しいエレガンスを運んでくる。
ロベルト・カヴァリはピーター・デュンダスによる初のメンズコレクションを見せた。レパード柄のシアリングコートにパイソンブルゾンなど、カヴァリらしい艶っぽいアイテムがメーンになる。ジャカードや金刺繍のスクエアショルダージャケットなどは、70年代を思わせるフォルム。これまでのカヴァリよりもリアリティーという意味では前進しているのだが、ラグジュアリーピースばかりに偏っているようにも思える。
ヴェルサーチのショーは、暗闇の中に浮かび上がるように光る素材のアイテムでスタートした。会場の照明が明るく照らすと、滑らかな光沢のコートにグレースーツといったシックなスタイルに変わる。チャコールグレーのコートの襟にはVの文字を思わせるシルバーアクセサリーが光る。箔(はく)メタリックのパンツやブルゾン、星座の柄のバックパックとシャツなど、フューチャーリスティックな雰囲気にまとめた。
ドルチェ&ガッバーナのショー会場は、砂地にサボテンが生えた空間。マカロニウエスタンを背景にしたコレクションだ。サボテンやバラ、馬蹄(ばてい)をかたどった柄をスーツやシャツなど、さまざまなアイテムにのせていく。ピストル刺繍のスーツやヘリンボーンのポンチョなど、マカロニウエスタンの男たちのスタイルがもとになっている。パジャマスーツのリラックスした気分が彩りを添える。
(写真=catwalking.com)