この連載では、デザインやもの作りのインスピレーション源となるような、知る人ぞ知る服飾系ミュージアムを紹介します。
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東京・赤坂 日本服飾文化振興財団服飾資料館
世界に通じるデザイナーを育てる
近年、レディス、メンズを問わず商品の同質化が極まっている。同質化から抜け出すために必須なのが、オリジナルな企画力だ。企画は無から突然ひらめくものではなく、豊富な知識や経験の積み重ねから生まれてくるもの。有力デザイナーであればあるほど、勉強熱心で知識が深いとはよく言われている。知識を得る方法として手っ取り早いのが、ファッション系の博物館やミュージアムに通って過去から学ぶこと。この夏はミュージアムへ行こう!
1万点以上を所有
東京・赤坂のユナイテッドアローズ本社と同じビル内に、日本服飾文化振興財団の服飾資料館がある。生地見本や雑誌、トレンド発信会社がシーズンごとに作成したディレクションボード、写真集、古着など、膨大な数の貴重な資料を揃えており、ファッション好きならば行くだけでテンションが上がる場所だ。同財団が持っている資料の総数は1万863点。とても館内には収まりきらないので、6割は埼玉・秩父の倉庫にある。トレンドや世の中のムードに合わせて、館内に置くものを入れ替えているという。
生地見本では、1800年代後半のものや、1920~30年代のアールデコ期のプリント柄集などがある。大量生産でなく、丁寧にものが作られていた時代の生地は、今見ても色柄の合わせや織りのテクニックが新鮮。今シーズン注目のペーズリー柄だけをとっても、様々なこなし方のアイデアが見つかる。「特に、20~30年代の資料は海外の有力デザイナーも現在熱心にリサーチしているので、近しいムードが今の商品にも反映されている」と資料館の担当者。
洋雑誌は、米仏の『ヴォーグ』『ハーパーズバザー』『マリ・クレール』『ロフィシャル』などが、20世紀前半の号からズラリと揃う。日本の雑誌で面白いのは、創刊号を集めたコーナーだ。「創刊号を見れば、時代性と当時のニーズが分かる」という考えのもと、『ブルータス』『メンズノンノ』『オリーブ』『平凡パンチ』といったファッション誌、ライフスタイル誌、ニュース週刊誌の創刊号を約170冊集積している。
古着も豊富だ。ファッションデザインの基礎で、ここ数年のユーティリティーのトレンドにも合致するミリタリーユニフォームやワークウエアを始め、時代を彩ったブランドのアイテムも多い。現在、力を入れて集積しているのが「サンローラン」だ。サファリジャケット、スモーキングなど、60~70年代を中心にしたビンテージが揃っており、寄贈も受け付けている。
■データ■
住所=東京都港区赤坂8の1の19、8階
電話=03・6894・1989(要事前予約)
開館時間=土日祝日などを除く11~18時
入館料=無料