《新人店長のVMD物語》⑪“柄”のアピールはシンプルに

2017/05/14 06:00 更新


12回にわたって連載中の、架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネジャーの大谷さんが登場します。

前回、悩めるセール中のVP(ヴィジュアルプレゼンテーション)問題をクリアした麻紀。今日は副店長の美穂とともに、難易度の高い柄物商品の打ち出しに挑みます。

♪♪♪

麻紀の夏休みが終わった。1週間の休暇は友人とハワイでのんびり過ごすことができた。

「麻紀さんおはようございます! 旅行どうでした? 楽しかったですか?」副店長の美穂だ。

「お休みありがとうね! お土産買ってきたよ。リフレッシュしてきたから、今日からまた気持ちを新たに頑張るわ」


麻紀が不在の間、美穂は売り場作りに苦戦したようだった。

「今年は柄物の商品がたくさん入荷しているじゃないですか。夏は花や植物のボタニカル柄とか、ヤシの木などのトロピカル柄がはやっていたので、秋物でもお客様の反応がいいんですよね。でも私には難易度が高かったみたいで…すみません」


美穂は「柄」というテーマをアピールしたくて、柄のトップとボトムを前面に集めていた。その結果、柄がごちゃごちゃしてうるさい売り場になったのだ。

「『柄』というテーマを設定したのは良いことだよね。メディアでも注目されているし、お客様の興味もひくようだし。ただ、このままではちょっと見た目に問題アリだなあ。洗練されたブランドというイメージはないもんね」

「どうしたらいいですか?」

麻紀は、テーマを「柄」だけではなくて「柄のトップ」か「柄のボトム」に絞ってみてはどうかと提案した。

「例えば『柄のパンツ』をテーマにして、無地のトップと合わせて見せるのはどう?」

「なるほど。無地とのコーディネートだとスッキリしますよね! そっか…テーマをもっと絞ればよかったんですね」


美穂は第1テーマを「柄」、第2テーマを「トップとボトム」、第3テーマは設定していなかった。麻紀のアドバイスを受けて第1テーマを「柄」、第2テーマを「パンツ」、第3テーマを「柄のパンツと無地のトップとのコーディネート」とした。

早速、美穂は売り場作りに取り掛かった。柄のパンツをラック2本に集め、近くの棚什器にはそれにコーディネートする無地のカットソーやニットなどのトップを並べた。


「麻紀さん、メーンの2体のボディーのパンツは、柄の種類は絞らずに、色だけ合わせることにしてもかまわないですか? パンツを見てもらえるように、2体のトップはアイテムも色もできるだけ統一します」

「それでやってみよう。あとは小物のコーディネートも統一してね」

トップの情報を多くすると、視線はトップで止まってしまう。目から遠いボトムを見てもらうためには、他の情報をシンプルにすることである。

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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。

(繊研新聞2014/6/30付けの販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)



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