ユーティリティーのリアルスタイル
【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子通信員】16~17年秋冬ニューヨーク・コレクションは優しく落ち着きのある気分を生かした上質なラインと、ユーティリティーのリアルスタイルが広がっている。ユーティリティーはニューヨークの得意とするところ。ミリタリーアイテムやワークウエアを背景にした女性のリアルなスタイルが今シーズンも注目されている。
レイドバック・ラグジュアリー/ザ・ロウ
前シーズン、パリでコレクションを見せたザ・ロウがニューヨークに戻ってきた。黒、ピンク、ベージュ、ブラウンのトーン・オン・トーンのスタイルで、静かに上質さをアピールする。
丸みのあるショルダーラインのコートで始まったコレクションは、アストラカンやダブルフェイスカシミヤの優しいタッチのコートへと続く。ほとんどがコートルックで、そこにワイドパンツやマキシスカートを合わせていく。レザーはナチュラルタッチのブラウンや黒いパイソン。そのいずれもが優しく体を包むコートに仕立てられる。ドレスはギャザーでドレープを作ったものやストレートラインのシンプルなもの。レイドバックイメージの落ち着いた空気が支配する繊細でぜいたくなラインに仕上がった。
3.1フィリップ・リムはジャポニズムの要素を取り入れながら、女性のリアルなワードローブを揃えた。ハウンドツースのセットアップに合わせるのはキルティングのきもの襟のコート。太いテープを垂らしてアクセントにする。レザーのコートやブルゾンは、チェック地を切り替えたりアップリケで変化を作ったり。
ドレスは、斜めに太いひもをステッチしたレースアップ飾りやホッチキスのようなメタルステッチで生地をつなぐ。ジップディテールをアシンメトリーに走らせたドレスやイチョウの柄をスパンコール刺繍したドレスもある。カーキを軸にしたユーティリティーカラーとラメやベルベットの光沢のコントラストも利いている。「自分の価値観で生きる自立した女性のための多様性に富んだワードローブ」がコンセプト。