16～17年秋冬パリ・メンズコレクション
ユーズド、エイジド加工がポイント
【パリ＝小笠原拓郎】１６～１７年秋冬パリ・メンズコレクションは、マスキュリンなテーラードスタイルとともに、エイジド加工、ユーズド加工といったテクニックが広がった。穴あき、ほつれたディテール、カットオフ、オーバーダイで使い込んだような色合いを出したアイテムも目立つ。
ルードボーイ・エレガンス／ランバン
ランバンはマスキュリンなスタイルを前面に押し出した。少年たちのルードな気分を取り入れて、胸をはだけたシャツに大きめのコートで風を切る。ドロップショルダーのスーツはフィッシュネットのようなインナーと合わせて、鍵の刺繍のブルゾンはワイドパンツにタックインして着る。
いつもよりシンプルに見えて、実はエイジングの加工がされているのが特徴となる。シアリングのはぎ合わせやテーラードのしわ加工、コートにはナッピング加工やオーバーダイがされ、動きとともに複雑な表情を見せる。秋冬なのに半袖シャツをニットにレイヤードして着る提案もある。タイダイのような染めのシャツに落ち感のあるドレープシャツといったアイテムだ。
ここ数シーズンはショーとしての完成度は高くても、作り込み過ぎて商品としてのリアリティーに欠けるものも多かった。秋冬は素材や手仕事にこだわりながらも、さらりと着られるアイテムが多い。フィナーレに笑顔で登場したルカ・オッセンドライバー、その横にはもうアルベール・エルバスはいない。その寂しさを実感するとともに、オッセンドライバー自身の手で自らのランバン・メンズ１０周年を祝福するコレクションとなった。
ポール・スミスのコレクションにカジュアルなスタイルは全くない。コートやスーツなどのテーラードを軸にしたスタイルだ。しかし、その色や柄のピッチで軽やかに遊んでいる。グリーンやロイヤルブルー、ピンクやボルドー、オレンジといったクリーンな色をコートやジャケットにのせる。コートやスーツのストライプのピッチ幅は広く、ほとんどストライプとはいえないようなグラフィカルな線となる。セーターやジーンズには恐竜柄を編み込んだりペーズリーのパッチワークをしたりして、テーラードとのコントラストを利かせている。
トム・ブラウンのショー会場には巨大なシャンデリアと大きな額縁がいくつもたてかけてある。そこに帽子をマスクのようにかぶって顔を隠したモデルたちが登場する。いつもどおりのグレーとネービーのシンプルなカラー構成だが、秋冬はダメージ加工がされたディテールが多い。ファートリミングのコートもヘムの部分がほつれ、キルティングヘリンボーンのコートもところどころが破れている。チェック地とニットがニードルパンチで重なったコートも部分的に生地がはがれたようなディテールになっている。犬の形をしたハンドバッグがストイックな雰囲気を和ませる。
アミ・アレキサンドル・マテュッシが大人っぽく艶っぽくなった。ベージュのコート、べージュのシアリングコート、レザーのボマージャケットに側章入りのパンツといったシックなコーディネートを見せる。スクエア柄も特徴の一つ。ヘリンボーンにスクエア柄のコーティングをしてチェックを作ったり、白と黒のバイカラーニットでスクエア柄を編みたてたり。きらきらのスパンコールコートでフィナーレ。
ケンゾーのショーが始まると、赤いコートを着た男女がたくさん歩いてくる。整列してみるとそれぞれのコートに「ソプラノ」「アルト」「テノール」といった文字が書いてある。コンダクターに合わせた合唱とともにショーが始まった。秋冬は型押しクロコダイルのスーツやブルゾンなどが多い。コートやパンツには曲線的なプリントがのせられるほか、バイカラーを曲線的に切り替えたスーツも目立つ。ロゴプリントは筆記体でトレーナーにのせられた。
クリスチャン・ダダ
パリ・メンズで初のショーをした。写真家の荒木経惟とのコラボレーションによるコレクションは、荒木の写真プリントをのせた服、作品名でもある「左眼ノ恋」の文字をジャカードで描いたトップなどがメーンとなった。花刺繍のバイカージャケットやパープルレザーのセットアップも。
ベルルッティ 会場にしつらえられたのは輝く砂のステージ。高級紳士靴からスタートしたブランドらしく、真っ暗な中で靴が輝くように浮かび上がる演出でショーはスタートした。タトゥーがキーワードになっており、タトゥーのようにステッチワークを利かせたスーツのほか、アッパーにステッチを入れた靴も目立つ。
ホワイトマウンテニアリング
パリのデビューコレクションは、赤いバファローチェックのポンチョやセットアップ、ネーティブアメリカンのタペストリーのような柄のトップやコートが揃う。アウトドアとモードのミックスは、パリで見るととても日本的だと気づかされる。世界市場を見たときに、どれくらい需要があるのか見てみたい。
メゾン・マルジェラ
ダッフルコートを解体してデコンストラクトしたように、様々なコートのベント位置にトッグルボタンが飾られる。そこに合わせるのはサイドシームを割ったディテールのパンツやタイトなハーフ丈のレギンス風パンツ。カットオフのディテールはコートのヘムやベストのショルダー部分に使われた。
ウミット・ベナン
テーマはジャポニズムだが、その背景には日本への悪意があるのか、あるいは知識が浅すぎるのか。ショーの会場には、女体盛りのすしが置かれ、それをつまむ男たちの周りをモデルが歩くという趣味の悪さ。柔道着や作務衣のような服が多いが、そこに描かれる鶴の刺繍も日本の技術には程遠い。
（写真＝アミ・アレキサンドル・マトュッシ以外はｃａｔｗａｌｋｉｎｇ．ｃｏｍ）
