《16年春夏パリ・コレクション》バランス変化で新しいベーシック
【パリ=小笠原拓郎、青木規子】16年春夏パリ・コレクションは、アブストラクトで原初的なパワーを背景にしたコレクションやテクノロジーを背景にしたコンセプチュアルなコレクションが登場した。パリコレ初日恒例の若手も勢揃い。話題のブランドが初めてのランウエーショーを行った。ベーシックを軸に、バランスやディテールの変化で新しい表情に仕上げる手法が広がっている。
ジャックムスが幻想的な雰囲気のショーを見せた。円形のステージに登場したのは、巨大な赤い布でできた玉を押す少年。必死に玉を押す少年がいなくなり、そこからショーはスタートする。登場するのはジャックムスらしいアブストラクトなパワーを持ったアイテム。パンツスーツに白や赤のテープを重ね、サロペットには白いリボンディテールを飾る。
アイテムを再構築して、半身のアイテムやワンショルダーにデフォルメしたアイテムも多い。グレーのテーラード襟のワンショルダードレスは、単体ではアシンメトリードレスだが、2人のモデルが並んで歩くと、シンメトリーのテーラードジャケットのように見える。ショーの中盤には、白いパジャマのようなシャツを着たジャックムス本人が白馬を引いて現れ、その後を赤い巨大なリボンを引っ張りながら少年が続く。エッジの利いた原初的パワーを背景にしたジャックムスの手法はそのままだが、いつもよりコンセプチュアルに見える。
アンリアレイジは、カメラのフラッシュに反応して鮮やかな柄になって映る服を見せた。ショーに先立ち、観客にはスマートフォンを持参する指示がされ、フラッシュを使って撮影する旨が説明される。
白やエクリュの無地に見えるドレスは、カメラのフラッシュによって、小花柄や万華鏡のような柄が浮かび上がり、スマートフォンに映り込む。これまで同様、テクノロジーを背景にしたコレクションだが、これが昨今のSNS(交流サイト)による、「いいね」の拡散を揶揄(やゆ)しているのだとすれば、今の時代のファッションショーへの問題提起としては面白い。
(写真=大原広和)