仏「ピンキー」が業界団体から除名 シーインとの合弁で

2025/10/15 18:00 更新NEW!


 【パリ=松井孝予通信員】仏カジュアルレディスブランド「ピンキー」がウルトラ・ファストファッション「シーイン」と合弁会社を設立したことを巡り、論争が一段と厳しさを増している。仏ファッション業界の団体はピンキーを除名し、同社は事実上、主要な業界組織から追放された。批判から具体的な制裁へと事態は進展し、対立が深まっている。

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 業界側は「シーインは規制回避と不正競争の象徴であり、環境負荷や消費者保護違反でも繰り返し摘発されてきた」と指摘した。「ピンキーは業界の共通の取り組みから逸脱した」として処分に踏み切った。これに対し、ピンキーCEO(最高経営責任者)のサリフ・ハラッシ氏は、「業界団体・連盟から2年以上支援を受けたことがなかった。多くの企業がピンキーの終わりを待っていたに違いない」と反論した。シーインとの提携については「国際展開とデジタル化のための再建戦略」と強調し、20店の新規開業など業績改善を根拠に「今後は雇用創出につながる」と主張する。

 シーイン側も「双方に利益をもたらすパートナーシップ」と位置付ける。プログラム「シーイン・アクセラレーター」を通じ、ピンキーの商品を160カ国・地域で販売し、オンデマンド生産や受注処理など物流面で支援する。シーイン仏広報責任者のクエンタン・リュファ氏は、「欧州市場におけるマーケットプレイス事業を拡大する意向であり、すでに招待した25%が仏ブランド」と説明した。これに対し仏業界団体は、「仏ブランドがシーインに依存するのは受け入れがたい」と反論している。

 再建を目指す企業の選択と、仏ファッション産業を守ろうとする動きが真っ向から衝突する構図だ。低価格志向や2次流通市場に押され、中価格帯SPA(製造小売業)は苦境に陥っている。この構造的課題が解決されない限り、「第2のピンキー」がシーインとの提携を選ばざるを得ない事態を招きかねない。



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