楽天ファッション・ウィーク東京は、アジアを拠点にするブランドの積極的な参加が見られる。23年春夏の今回は、あるものに一手間、二手間を加えて独自の造形性を作る、ファッションへのエネルギーを感じさせるプレゼンテーションが続いた。
台湾のセイヴソン(ヅゥチンシン)は、東京のストリートで撮ったムービーで発表した。登場したのは日本で活躍する台湾の女性7人。フォトグラファー、アクセサリーデザイナー、モデルなど、それぞれが自分を発信するSNSのような映像だ。コレクションのベースとなるのはトレンチコート。スカーフプリントも組み合わせる。よくある手法とはいえ、そのこなし方は思い切りがあって気持ちいい。フルレングスをウエストとヒップ2カ所の太いベルトで締めつけ、袖はふっくら大きなキャップスリーブ。雨よけのヨークはスカラップヘム。コートのベルトのデザインを肩に持ってきたジレのようなアイテムも。そのカットと丈の組み合わせで、ところどころ今っぽく肌見せする。たっぷりギャザーで肩からぼわんと膨らませた袖のブルゾン、胸に曲線状のドローコードやピンタックで強弱をつけたシャツもある。ビッグシルエットを新鮮なバランスで見せた。
(赤間りか、写真=ブランド提供)
同じく台湾のエイ・クライプシス(イー・ファン・チャン)は、前回に続く2回目の参加となる。東京の景色を背景に、グラフィカルなカットに特徴を出したコレクションをムービーで見せた。高架下を歩く若いモデルが着るのは、裏原ストリートをほうふつとさせるスタジャン。合わせたトラックパンツは、うねうねとした曲線の切り替えにより立体変化を出したフレアシルエット。別のシーンでは、ジオメトリックな形状が連続する中わたのアクセサリーを重ねる。日常のベーシックアイテムに違和感のあるフォルムを取り入れ、視覚的に動きのある印象を作っていく。フーディーとトラックパンツのセットアップも、バイカラーの曲線のモチーフが交差する。広角レンズを生かした撮影も交えて、ゆがんだグラフィカル感に遊び心を出した。
(須田渉美、写真=ブランド提供)
タイ出身のラロパイブン・プワデトが手掛けるアブランクページがデビューした。新作のテーマは「ステレオタイ」。出身のタイに対する偏見や固定観念を取り払いたいという思いから、新しいイメージを模索した。登場したのは、布をふんだんに使った造形服。Tシャツには蛍光イエローのPVCコートを重ね、ノーカラーシャツとパンツのセットアップには寺院を思わせる三角帽子。ネオンカラーや花の造形などタイの派手なイメージを取り入れたカジュアルスタイルが揃った。そこから次第に色が抜け、コレクションは真っ白になる。袖にシャーリングを寄せたチュニックに、シャツを巨大化したロングドレス。布がたわむ造形服はドレッシーでありながら、カジュアルにも見え、ジェンダーの垣根を超えていく。デザイナーを志して来日し、文化ファッション大学院大学などで学んだ後、今年ブランドを立ち上げた。
(青木規子、写真=加茂ヒロユキ)