米発・靴のクラウドソーシング、始動

2016/03/04 06:00 更新


 クラウドソーシング(ネットを通じたデザイナー、工場などの募集・活用)を活用した米国の靴メーカー、ルーイ(ROOY、シアトル)が今春、日本事業を本格化する。「シューズデザイナーのインキュベーション」をコンセプトに、120カ国・1200人の靴デザイナーをネットワークし、企画・製造・販売まで行う。2月に日本支店を開設し、靴デザイナーの発掘、販路・卸し先の開拓、ブランドとの協業を計画する。

 同社は14年創業のスタートアップ企業。父が靴工場を経営し、自身もそこで働いた経験のあるライアン・カン氏が立ち上げた。大手企業の靴デザイナーや靴職人と接する中で、デザイナーにとってブランドを立ち上げたり、独立するのが難しい現状を目の当たりにし、「デザイナー支援と靴作りのプラットホーム作り」を志した。

 デザインは世界中のルーイ登録デザイナーから募り、デザインを採用した靴の売り上げに応じてデザイナーに利益を還元する仕組み。仏のアーセン・ロック(Arsen・Rock)など実力派から服飾デザイナー、学生まで幅広く名を連ねる。五つある協力工場で生産し、ロット・価格・デザインにおける交渉力が強みだ。これまで約4億円(340万㌦、当時の1㌦=120円で為替換算)の資金を調達し、米国のほかに韓国でも事業展開している。

 日本では、15年12月からパルコのクラウドファンディングサービス「ブースター」に参加し、目標額の100万円に対し、約383万円を集めた。日本の消費者向けデザインとして世界で案を募ったこと、事前に一般ユーザーの人気投票を経て商品を決めたことで、支持を受けやすかったとみられる。

■ブースター出品モデル「メードフォージャパン」

 この結果を受け、日本進出を決定。日本支店のトップには、トーマツベンチャーサポート出身の上森久之氏が就いた。今年はまず日本語サイトをオープン、充実させ、これまで登録の少ない日本のデザイナーを発掘する。靴デザインの学校とも連携する考え。

 販売では、直営店の開設とともに、商業施設・専門店で卸先を開拓する。チェーン店とのタイアップモデルも視野に入れる。米国ではノードストロームで扱いが始まっている。

 さらに、日本のファッションブランドで、靴の取り扱いがないブランドなどに、ルーイの企画・製造・販売機能を活用してもらう。既にグローバルでは実績があり、スポーツ用品メーカー、ヘッドのヨガラインと商品を開発し、ルーイのサイトでグローバルに販売・PRを行った。また日本素材の採用にも積極的で、クロキのデニム、クラレの人工皮革「クラリーノ」で実績がある。

■日本で販売を予定している主力商品

 

■パルコのクラウドファンディング 米靴メーカーが成功

 パルコのクラウドファンディングサービス「ブースター」で、海外案件の成功例が出た。昨年末から募集していたクラウドソーシングを生かした靴メーカー、ルーイ(米)が目標額の100万円に対し、4倍近い額を集めた。同サービスで目標額の達成は珍しくないが、日本初進出の反響に手応えを得て、ショップ開設を検討している。

 募集開始から3日で目標額の100万円を突破し、2月末の終了までに383万4500円(93口)を集めた。商品はスニーカー3型で、げたや草履に着想を得たフォルム、デニムなど日本素材を採用した独創性の強いもの。「メードフォージャパン」をテーマに、ルーイがネットワークを持つ米国、ブラジル、メキシコのデザイナーとプロトタイプを作成し、支援を募った。ルーイは14年創業の新興企業であることから、パルコは「想定以上の結果。創業者が靴工場出身、かつデザイナー支援という強い思いをうたっており、共感を呼んだのでは」(佐藤貞行新規プランニング部業務課長)と見ている。早ければ今春の出店となりそうだ。

左から3人目が創業者のライアン・カン、5人目がジャパンオフィスの上森氏(ジャパンオフィスローンチイベントで)
左から3人目が創業者のライアン・カン、5人目がジャパンオフィスの上森氏(ジャパンオフィスローンチイベントで)


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