開発進む注目の“デニム風”素材

2015/06/15 06:30 更新


 デニムの隆盛とともに、デニム風素材が広がりを見せている。「本物のデニムにいかに近づけるかをずっと追求してきた」(モリリン)各社の研究開発の成果が花開いている。

■トーン差で柄 山陽染工の抜染

 山陽染工は、生地のインディゴ染めが大量生産できる数少ない染色整理工場。無地染めのほか、抜染や特殊プリントを組み合わせた素材も提案している。中でも抜染は、創業期の大正から手掛け続けてきた同社の得意技術。

 昨年は新たに、段落ち抜染を発表した。抜染は1型が主流だが、段落ち抜染は、複数の型で抜き、色のトーン差で複雑な柄を出す。一度で全ての型を抜くが、抜染剤は無色透明で、洗いの工程を経るまで仕上がり具合が見えない。長く培われた職人の経験と技、薬剤の革新技術がカギを握る加工だ。同技術をきっかけに、リバティジャパンとの協業が決まり、インディゴで「リバティ」の繊細な花柄を再現した。4型で抜染し、細かな輪郭線は顔料で描いた。今年3月をめどに傘下に収める角南染工場と連携で、同社の硫化染めに段階抜染を施した新素材も開発し、インディゴ以外のカラーバリエーションも広げる。

■合繊にインディゴ 小松精練「ディーゴ」

 小松精練の「ディーゴ」は、合繊のインディゴ染め。タマネギの外皮に含まれる色素を活用し、合繊にインディゴ染料を安定的に染着する技術を開発した。染色堅牢度を追求し、洗濯しても風合いや表情を損なわず、色落ちもしない。機械の調整で、濃淡を自在にコントロールできるため、豊富なカラーバリエーションが可能だ。15年春夏に向け、欧州のメンズカジュアルブランド、国内のアウトドアブランド、セレクトショップなどに採用され、売り上げは堅調。これまで、ナイロン織物に限定してきたが、今後、ポリエステル、ニットと素材のバリエーションを広げるため、研究開発に力を入れている。

■豊かな杢感表現 モリリン「セルデニム」

 モリリンが15年春夏向けから販売しているのが「セルデニム」。デニムの感覚を再現しながら、デニムの欠点とされる色落ちの改善を追求した。軸はセルロース繊維「テンセル」。フィブリルタイプで染料吸収度が高い糸を選び、綿、ポリエステルと特殊な紡績方法で混紡した。

 染料をあまり混ぜずに染めることで、テンセルと綿の濃淡がはっきり表れ、そこに白く残ったポリエステルが交じり合い、豊かな杢感が出る。テンセルの混率を高めれば、落ち感を出すことも可能。ヨーロピアンカジュアルテイストのやや高級感あるデニム調ながら、気軽に取り入れやすい丸編みで、Tシャツ、裏毛トレーナー、ブルゾン、羽織り物向けを狙う。

ロータリースクリーンプリント機に複数本のロールを並べ、一回の運転で出来上がる~段落抜色(山陽染工)
ロータリースクリーンプリント機に複数本のロールを並べ、一回の運転で出来上がる~段落抜色(山陽染工)


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