OTB表活用方法のまとめ(佐藤正臣)

2016/11/25 00:00 更新


佐藤せんせの算数で極めるMDへの道⑩


 大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。

 そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。

■ 前回のレポートはこちら→OTBのロジックを活用してみる

*    *    *


ではDさん。前回のまとめから入りますね。
 

へい。


 まず、今回の前提条件をもう一度確認してみます。
 
 1. 私が事業部長。受講者さんがMD・バイヤー

 2. 現在が4月20日ごろと仮定。

 3. この事業部は発注してから、店頭までの入荷に約2か月くらいかかる。

 4. 商品は春夏物のみ。7月末が会社決算なので、7月末在庫を3,000にしてほしいという指示を出している。

 5. 7月の仕入金額はMD・バイヤーが発注したい予定金額。発注は今週中。ルールとして5・6月はセールしない。7月はセールがある。


 
でしたね。


へい。上記の条件でOTB表にまとめたのが下記の図1になります。7月の売上予測は、私の会社の感覚では、6月の1.2倍くらいで、よって売上予測は今回のシチュエーションでは20,000になります。但し、M部長の指示は7月の末在庫は3,000。そうなると、7月の売上原価が10,000必要になる。そうすると、売上予測が20,000ですから、粗利高が10,000。粗利率が50%。原価率は30%なので、粗利率が50%になると7月のOFF率は40%がターゲットになる。




 


 素晴らしいですね。よく理解できています。


 へへへ。ただ私の会社ではセール月に40%オフは過剰ですし、私の会社のブランドイメージを壊すことになります。それはできない。また7月に40%オフせずとも、7月の売上目標はとれると思いますし、粗利高はもっとほしいところです。
 

Dさん。どうしたんですか(笑)すごく成長してますね。素晴らしすぎる。Dさんの言う通りです。粗利率を高くし、OFFを制限すれば、上記の図よりも確かに粗利高は確保できます。しかしながら、その分在庫は残ってしまって、M部長の指示通りにはいかない。では、これをどうするか?ということですよね。ではDさん。一度前提条件を確認してみてください。


 へい。あっ!そうか。まだ、4月20日で7月の商品は発注していませんでした。


 ブラーボー。そうなんですよ。まだ7月の商品は発注してないんですよ。ということは?Dさんどうします。


 7月に発注する予定だった仕入金額を減らす・・・ですか?


 そうです。そのことができるんです!では?Dさんの会社では例年。セール月のOFF率はどのくらいになります?だいたいでいいですよ。


 ん~~。そうですね~・・・30%オフくらいだと思います。感覚ですけど(笑)。


 大丈夫です。そうすると、粗利率はどのくらいの設定になります。


 計算中。。。粗利率は57%くらいです。


 正解です(計算方法は過去記事をご覧ください)。そうなると。粗利高は11,400。売上原価は8,600になります。Dさん。では、7月の仕入金額をいくらにした良いですか?


 図1のパターンだと、7月の売上原価が10,000ないと。M部長の指示した7月末在庫が3,000にならないわけですから・・・!10,000-8,600=1,400!!ということは、当初予定していた、7月の仕入金額7,000から1,400を引く、7月は5,600分の仕入金額の発注をすれば良いということですね。


 正解。では下記の図2でそのことを表現してみると。




 
 


 このようにOTB表を活用できれば、在庫を過剰に残すことも減り、粗利高の確保もできるということですね。OTB表って。ある意味、ブランド・ショップの基軸というか、一番大事なものなんですね~(しみじみ)。


 そうですね。MDにとってだけでなく、経営的にみてもブランド・ショップの指針として絶対的に必要なものなんですね。


 私も学んだことを生かして、早く自分のブランド・ショップのOTB表を作成します。社長にも「良いものがあればすぐに取り入れなさい。」と言われてるんで!


 是非、そうしてください。ただ、OTB表を正しく活用・運用するには、様々なことも同時に改革していかなければなりません。以下箇条書きで上げてみると。


 
・MD基本数値の理解。→教育

・MDスケジュールの可視化(予算作成・ディレクション・バイイング・発注のタイミング)

・予算設計の精度→(予測の精度の向上)

・月・週のMT体系。→チェック体制の確立(数値の可視化と共有。社内ルールの簡素化・統一)
 


 等簡単に上げましたが、これ以外にも変えるべきものが、おそらくたくさん出てくる筈です。


 うちの会社は色々変えていかなあかんな~(溜息)。でも、Mせんせ!このような問題を私に全部伝授してくれるんですよね!


 Dさん。実はこの連載の都合上、全部は無理です(笑)あと、会社特有の問題もあるので、直接入ってヒアリングしてみないとわからないことも多いですから~。Dさんの会社が3か月~半年くらいでいいんで、自分を使ってくれれば、ある程度の問題は解決する筈ですけどね(笑)。


 あ!どさくさに宣伝ぶっこんできましたね(笑)。でも自分たち自身で改革行うよりは、スピード早まって、効率的かもしれないですね。


 あざーす(笑)。では次回から新しい議題にステップアップしていきます。どうぞお楽しみに!!




95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp



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