SNSで多様な職業や働き方、生き方を垣間見ることができるようになったことで、若者の人生における選択肢は 格段に増えたように思います。
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失敗をしたくない
先日インタビューに応じてくれた大阪在住の高校生は「アートの分野で起業をしたいと思っているので、大学では海外のアートを学べる学校に進学したい」と、将来の夢をかなり具体的に話してくれました。住んでいる場所や年齢にとらわれず、起業を人生の選択肢として持つこともできるのは、今の時代を生きる若者の特徴でもあります。
しかし、起業を志す若者ばかりではありません。むしろ将来の夢や就きたい仕事が見つからずに悩んでいる若者の方が多く、彼らが夢を見にくくなっている現状もあります。
その理由の一つは、良くも悪くも顛末(てんまつ)が見えることです。SNSでは多様な職業や働き方、生き方を実現している人たちの華々しい生活が見られると同時に、夢の先にある失敗事例も確認ができます。反面教師になる良さもありますが、失敗したくない気持ちが強くなり、慎重な今の若者にとっては「こうなってしまうかもしれないのであれば、やめておこう」と諦める理由にもなっているようです。
適切な教育環境を
また、今の若者は周囲との調和を重視する傾向にあることから、夢に向かってチャレンジすることも自ら制限してしまう実態がみられます。以前ある大学生が「海外留学の機会があったけれど、留学をすると周りの友達に〝意識が高い〟と思われそうだから断念した」と話しているのに対して、周囲にいた若者も共感の姿勢を見せていたことがあります。
このように、みんなと違うことをすることに対して、不安やリスクに対する感度が非常に高い様子を、様々なシーンでよく見かけます。今の若者たちは、より多くの選択肢を目の当たりにしていて、挑戦してみたいことや夢があっても、事前情報や周りの目を気にして一歩踏み出せずにいるのかもしれません。
彼ら自身が自らの意思で変わっていくことも大切です。しかし、彼らの価値観形成には生まれ育った環境が影響していることを考えると、彼らだけの課題に収めず、社会全体で向き合う必要があるように感じます。
特に教育の影響が強いことから、SNSの情報との付き合い方や、調和と主張のバランス感覚を培うなど、今後も続くであろうSNS中心の社会に合わせた適切な教育環境の開発などが求められていくのではないでしょうか。