ニューヨークヒストリックソサエティー美術館で、「ビル・カニンガム:ファケード」展が始まった。
ニューヨークのファッション業界人のみならず、ニューヨークタイムズの日曜版を読む人なら誰でも知っているビル・カニンガムは、同紙で36年にわたり、ストリートファッションを撮っている名物フォトグラファーだ。
御年85歳になるが、トレードマークのブルーのジャケットを着て自転車で移動する彼の姿は、今もニューヨーカーたちの温かい視線を浴びている。彼の半生を辿ったドキュメンタリー映画「ビル・カニンガム・ニューヨーク」(2010年公開)も話題作となった。
そのカニンガムの作品を集めたこの写真展は、しかしながら彼が通常撮っているストリート写真ではない。
これは1968年から1976年までの間、カニンガムが手がけたプロジェクトで、彼が収集したビンテージの服やアクセサリーをモデルに着せ、歴史的建造物の前で撮った写真の数々なのである。
収集したアウトフィットは500以上、撮影したロケーションは1800以上に及ぶ。
グランドセントラルステーションやメトロポリタンクラブなど、馴染みの深いビルが多く登場するが、そのドアやファサードのディテールの美しさに目を見張る。
せわしない日常生活の中で気付かずにいた美しさを教えてくれたことに感謝したくなる、そんな写真が並ぶ。
カニンガムはボストン生まれ。48年にニューヨークに移り住み、68年から趣味でこのプロジェクトを始めた。
60年代後半から70年代のニューヨークは景気や治安が悪く、取り壊しの危機にさらされた歴史的建造物もあった。美しいビンテージと古い建造物のディテールに焦点を当てた写真は、厳しい時代でも誇るべきクリエイティビティーがあったことを記録として残したいというカニンガムの思いが込められている。
メーンのモデルは、写真家仲間で昨年11月に101歳で亡くなったエディッタ・シャーマン。
重厚な建造物と対照的な、わざとコミカルなポーズをとった写真がとてもチャーミングだ。カニンガムは元々帽子デザイナーであったため、それぞれのルックスがクラシックな帽子で完結されていることは言うまでもない。
展示数は約80点。会期は6月15日まで。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)