私事で恐縮だが、私がニューヨークに住み始めたのは88年6月。その当時、ニューヨーカーの憩いの場所として人気があったのはサウスストリートシーポートだった。マンハッタン島の南端に近いイーストリバーに面した一角である。
摩天楼のマンハッタンでは、ストリートから見上げる空はビルの隙間からしか見られないが、サウスストリートシーポートに来れば、広い空を仰いで開放感を感じることができた。
停泊している帆船も眺められるし、歴史的なたたずまいを残す建築物や石畳も趣がある。夜になればブルックリンブリッジのライトアップを含む美しい夜景も見られることから、ロマンチックなデートスポットにもなっていた。
しかしその後、サウスストリートシーポートの人気は急降下。ニューヨーカーにとっては「ツーリストの行く場所」となり、やがてツーリストが来てもサウスストリートシーポートは特に案内したい場所ではなくなった。
長いこと、マンハッタンではアバクロンビー&フィッチの直営店がサウスストリートシーポートにしかなかったので、「アバクロのためにあそこまで行かないといけないのか~」と思った人も少なくなかったはず。
ワールドトレードセンターから徒歩圏内だったため、9.11以降は特に訪れる人がさらに減少。低迷に追い討ちをかけたのが、12年秋のハリケーンサンディーによる損害だ。昨秋ついに、長年あったピア17というショッピングモールがクローズした。
ところがこの夏、サウスストリートシーポートはなんだか盛り上がっていた。ある日曜日に行ってみたら、大勢の人、人、人。さまざまなフードトラックが並び、レストランも大盛況。ストリートの中央ではフリーコンサートが開かれ、地面に敷かれたシートの上には座り込んでリラックスする人たちがぎっしり。え~いつの間に~?というくらい、活気にあふれていた。
サウスストリートシーポートのメインストリート
歴史的な建造物を背景に行われるフリーコンサート
ブルックリンベースのアートとカルチャーのインディー系メディア「ドシエ」が主宰するドシエ・アウトポストという名前のポップアップストアを集めた建物もある。
その外観はカラフルで楽しい。店のラインナップはときどき変わるようだが、私が行ったときは、1階にはセリマ・オプティックがあり、2階にはサーフがテーマのブティックがあった。2階にはビアガーデン風のテラスもあって、こちらも開放感と楽しさ、リラックス感に満ちている。
ドシエ・アウトポストのポップな外観
1階はいくつかのブティックが入っている
2階にあるサーフ系のショップ
ドシエ・アウトポストの2階テラス。マンハッタンにいながらにして、ちょっとトロピカルな気分に浸れる
そして、ピア17は16年に再オープンが計画されている。再建につぎ込まれる費用は2億6000万ドル。28000平方メートル弱の中にショップとレストラン、アウトドアバーの他、4000人が入れるイベント会場がつくられる予定だ。
再オープンした暁には、年間1億9300万ドルの経済効果が見込まれている。この夏のサウスストリートシーポートの盛り上がりを見る限り、ピア17の再オープンはなかなか楽しみだ。
苦節20年?の低迷期をやっと脱出して、再びサウスストリートシーポートが日の目を見ることがあるとしたら、人気があった頃を知っている筆者にとってはとても嬉しい。
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)