北海道・旭川のアメカジ専門店「ティル」の大谷俊介さんは、プロのイラストレーターとして有名企業案件も受ける異色の店主だ。アニメ好きを生かし、サブカルチャーネタ満載の商品紹介などをSNSで発信して話題になっている。全国にファンが増え、大谷さんに一目会いたいという客が道外から店に集まる。
(高塩夏彦)
「好き」に正直
学校で空間デザインを学びながら古着屋でアルバイトを始めた。旭川市内のアメカジ専門店で店長などを務めた後、18年に独立した。販売一筋で約30年のベテランだ。若い頃から古着とアメカジが大好きだが、同じくらいにアニメとイラストも愛しているという。
店作りにもそれが表れている。れんが、木材、コンクリートの床や壁に中世ヨーロッパ風、スチームパンクテイストのオブジェが並ぶ内装は「冒険者が集まるギルドをイメージ」して自らが手掛けた物だ。

商品は革ジャン主力の「ファインクリーク」やビンテージウェアに着想する「ジェラード」など〝ガチ〟のブランドが揃う。そこにアニメのTシャツやグッズも並ぶのがティルの個性。男臭い商品が詰まった棚を見上げるとフィギュアが鎮座している光景に、つい笑ってしまうアニメ好きも多い。「雰囲気から品揃えまで、自分の好きな物を全部詰め込んでいる」という。

店の2階はイラストレーターとしてのアトリエだ。旭川信用金庫のポスターに採用された美少女キャラクターやスズキの自動車「ジムニー」のTシャツに使われたイラストなどがずらりと並ぶ。ジムニーの商品などは、店やECでも販売し、人気になっている。



二足のわらじ
「店主もイラストレーターも本業。アメカジとサブカルの掛け算ができるのは自分だけの武器だと思う」。その独自性はインスタグラムでの発信でも発揮している。箱を開けると新入荷の商品がアニメの宝箱のように光って出てきたり、手から新作を〝召喚〟したりする編集をした動画をこまめに投稿している。商品をRPGのように〝装備〟と呼ぶ徹底ぶりだ。ハードな革ジャンにアニメTを合わせたコーディネートなども提案している。
ニッチで攻めた投稿が注目され、全国に名が知られるようになった。札幌など市外だけでなく道外からも大谷さんに会いに来店する客が後を絶たない。1時間ほどアニメトークで盛り上がっていたら高額な革ジャンが売れてしまうということも多いという。ECでも全国から受注が増え、最近では店とECの売り上げの比率がほぼ同じになった。
成功を受けて雑誌掲載や地元でのセミナーの講師の依頼など、活動の幅がさらに広がっている。「旭川を盛り上げる力になれたら本当にうれしい」
今後もぶれずに自分らしいやり方を貫く考えだ。「自分にしかできないやり方で、時間をかけても行ってみたいと思ってもらえる店にすることが差別化につながる。アニメ好きとファッション好きの距離が縮まっている今は追い風だ」と意気込む。

