オーガニックなムード、挑戦的な感覚生かして
3月に開かれた16~17年秋冬の「メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク東京」は、中心ブランドが発表の場を海外へ移したことで、盛り上がりに欠けた印象だったことは否めない。それを受けて、「東京のデザイナーブランドは大丈夫か?」という声も業界内でよく聞かれる。ただ、ウィークとは関係なく展示会を開いていた若手に目をやると、面白いブランドは着実に増えており、今後の動きに期待ができそうだ。
●ナイフ ストレートに大胆に
「トーガ」でカットソーデザインなどを担当してきた梶永真冶が、専門学校時代の友人と3人で立ち上げた。デビューシーズンの16~17年秋冬は、文房具の〝付箋{{ふせん}}〟を着想源にしたというのが面白い。ジャケットの胸ポケットからピンクの付箋風の布がのぞき、ジップのスライダーも付箋を思わせるデザイン。こうした直球の表現も楽しいが、ラウンドショルダーのボリュームコートはキルティングライナーがフロントから飛び出す仕様で、貼り付ける、挟み込まれるという付箋の用途を、ファッションデザインにちゃんと落とし込んでいる点がいい。「複雑化する時代だからこそ、ストレートに、大胆に。パッと見た時に、何これ?ってなるようなものを作りたい」と梶永。
●ベルパー モダンな中にひとひねり
尾崎雄一が14~15年秋冬に立ち上げた。16~17年秋冬は、クリーンでモダンな感覚の中に、ひとひねりのあるアイテムが揃う。「自分が本当にやりたいことをやろうと吹っ切れたシーズン」だと言い、一段ステップアップした印象だ。ウェス・アンダーソン監督の映画からイメージを広げており、「グランド・ブダペスト・ホテル」の世界を思わせるようなペールトーンの色使いがポイント。サックドレスやストレートスカートは、刷毛で色を塗り分けたようなカラーブロックになっている。肩でストラップを結ぶドレスは、ストラップを結ばずに垂らして着こなすと、ガラリと表情が変わる。地方専門店を中心に販売しており、秋冬は新規卸し先が10店増え、計19店になる。