不器用なりに攻めを見せたい 「リトゥンアフターワーズ」山縣良和

2016/10/09 06:00 更新


世界に売る ~東京デザイナーの現在地【2】~

連載第一回はこちら→ 「世界との間に壁は無かった」 落合宏理

 

 

 

「リトゥンアフターワーズ」 山縣良和さん

不器用なりに、“攻め”を見せる方がいい

山縣さん写真
やまがた・よしかず 80年鳥取県生まれ。日本の服飾専門学校を経て、英セントマーチンズ美術大学に留学、05年首席卒業。メゾンでのスタージュなどを経て帰国。07年に「リトゥンアフターワーズ」を立ち上げ、以降東京でショーを開催。14年秋冬にはベーシックラインの「リトゥン・バイ」を開始。

 

――現状の海外卸先軒数は。

シーズンによって増減はありますが、海外卸先はいま7~8軒。15年にLVMHプライズのセミファイナリストに選ばれたり、パリ・メンズコレクションの時期にコレットのウィンドーディスプレーを担当したりしたことで、海外バイヤーの間で認知が高まった部分はあると思います。沢山ブランドがある中で、分かり易い自己紹介になったから。

 

今後パリでやっていく上で、LVMHプライズのような場に選ばれることは非常に重要だと身に沁みて感じました。あのプライズにはファッション業界の重要人物がほぼ集まっていて、彼らがファッションを動かしています。向こうのデザイナーたちはデザイナー同士繋がっているし、ゲストや審査員とも繋がっている。

僕はヨーロッパに居なかった時期が長いから、全然繋がっていないんです。向こうのネットワークに入り込んで、ちゃんとコミュニケーションしてっていうことが僕はまだ全然できていない。そこは日本人デザイナー全員の課題じゃないですか。

 

――これまで、アフターワーズでコンセプチュアルなイメージを見せて、リトゥンバイを売る、という形を国内外で取ってきた。そのやり方に対して手応えは。

僕らは今まだ模索中で、これからという段階。17年春夏は、リトゥンアフターワーズの比率をこれまでより高めようと思っています。アフターワーズは1点ものを中心にクリエーションを見せるライン、売っていくのは量産の「リトゥンバイ」としてきましたが、ブランドを認知してもらう段階では、アフターワーズを前面に持っていった方がいいなと思って。

 

海外展を3シーズンやって、リトゥンバイでは風穴を開けられないって感じたんです。だから、アフターワーズの中で、挑戦的な感覚を持った量産アイテムも作っていきます。攻めたものを見せる方がパリでは効果的だと感じたし、不器用なりにだけど、僕の一番強い部分を発揮するにはそれがいいと思って。

それがすぐにビジネスに繋がるとは思わないけど、「そういう人が必要だよね」という空気感がパリにはあります。

 

リトゥンアフターワーズ
東京で行った16~17年秋冬コレクションから

 

――自身のクリエーションと並行して主宰してきたファッションスクール、ここのがっこうを株式会社化するなど、将来に向けて地固めを進めている印象だ。今後の課題は。

課題は山積みです。いま一番難しいと思っているのはバランス。売っていくものと攻めるもの、予算、日本のことと海外のこと、価格…。色んな調整を考えないといけないし、新しい売り方や方法論も模索しないといけない時代です。

急に形を変えて拡大させるのではなく、焦らず一段ずつ上がっていくことを大事にしています。今すぐには形にならなくて、お金にならないことでも、投資となって数年後に価値を作っていけるようにしたい。そのための下地作りとして、いまはスタジオを整えている感覚です。

この1、2年のうちに、パリで小さなプレゼンテーションができたらいいなとぼんやり考えています。リでの本格的なショーは、数年後にできればとイメージしています。

 

 

◇16~17年秋冬の海外卸先軒数=7~8軒

◇代表的店舗=仏コレット、米Hロレンツォ、カナダのエッセンス

【繊研新聞16年9月6日付けに掲載した記事を、一部加筆修正して掲載しています】

(ポートレート撮影=加茂ヒロユキ)

連載第三回はこちら→ 「東京のショーでも見ている人はいる」 西崎暢

 



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