世界に売る ~東京デザイナーの現在地【3】~
連載第一回はこちら→「世界との間に壁は無かった」 落合宏理
連載第二回はこちら→「不器用なりに攻めを見せたい」 山縣良和
「ウジョー」 西崎暢さん
東京のショーも見ている人はいる
――海外展はいつから行っているか。この間の進捗は。
16年春夏に、PR01.ショールームのニューヨークとパリに参加し、16~17年秋冬はミラノでショーを開催、その後パリのギャラリーで単独展を行いました。
ショールームに入るべきかとも考えたんですが、日本でも自分たちだけで少しずつ卸先を増やしてきたから、反応を直接肌で感じて、もの作りに一番多くのフィードバックを得られる形が良かった。それで単独展の形になりました。16年春夏に決まった卸先は5社、16~17秋冬は合計で14社です。
――海外市場を目指す日本ブランドの中では、比較的滑り出し順調という印象を受ける。海外バイヤーに支持される要因は。
僕も妻もヨウジヤマモトのパタンナー出身で、海外展にも立っていました。自分たちで服の形をおこすので、大体海外でのサイズの感覚も分かります。サイズは単にたくさん用意すればいいというものではなく、その国の人が心地良さそうに着ているイメージが描けるかが大切。
最初のシーズンからバイヤーに多少は見てもらえたということは、サイズ、価格、デザインの加減など、僕らが考えていたことが、ある程度間違っていなかったんだと思う。
――16~17年秋冬はアルマーニの支援枠でミラノでショーもした。ショーをしたことでの手応えは。
たしかにミラノでショーもしましたが、パリ展に来たお客さんの多くは、実はショーの前からアポイントが決まっていました。16年春夏の東京でのショーの画像を付けてメールを送ったら、興味を持ってくれたんです。
今は東京のショーもウェブサイトに全ルックがあがるので、海外の店のバイヤーでも見ている人は東京のショーも見ています。実際、15~16年秋冬の東京のショー画像を見たバイヤーから問い合わせが何件か来ていました。それが海外展を始めたきっかけの一つでもあります。
東京が他の都市に比べてどうだとかではなく、ものが良ければ見てくれる人がいるという感触はあります。バイヤーは、このブランドは伸びるかもと思ったら、他店よりも先に手を付ける。「うちは『サカイ』がバッティングで取れなかったから、日本のブランドでいいものを探している」と、カナダからわざわざ来日して商品を見に来たお店もありました。どの都市で発表しても、彼らの心にひっかかれば、何かはある。
――若手の有力ブランドは世界中に無数にいる。その中で競り勝っていかないといけない。
昨年は、伊『ヴォーグ』の若手ブランドを集めたイベントに呼ばれて、ドバイにも行きました。香港やシンガポールといったアジアの若手とブースを並べる中で、今後は彼らと勝負をしていくことになるんだろうなという意識が芽生えた。
彼らは毎シーズン、複数都市で展示会をするのが当たり前で、それがスタンダードです。僕らもどこかのタイミングで、そういうスケジュールにしなきゃいけない。17年春夏は、パリ展の後に東京でショー(10月17日)と展示会をします。
これまでは、自分たちが当たり前と思うことを海外でもやってきただけだから、戦略的になるのはこれから。時期を見て海外でのショーも考えていきたいけど、前回ミラノでショーをしたから次はどこだとか、そんな風に焦って考えてはいません。
◇16~17年秋冬の海外卸し先社数=14社
◇代表的店舗=シンガポールのクラブ21、米トトカエロ、カナダのTNT
【繊研新聞16年9月7日付けに掲載した記事を、一部加筆修正して掲載しています】
(ポートレート撮影=加茂ヒロユキ)
連載第四回はこちら→ 「スタイリングまで考えるように」 江角泰俊