世界に売る ~東京デザイナーの現在地【4】~
連載第一回はこちら→ 「世界との間に壁は無かった」 落合宏理
連載第二回はこちら→ 「不器用なりに攻めを見せたい」 山縣良和
連載第三回はこちら→ 「東京のショーも見ている人はいる」 西崎暢
「ヤストシ・エズミ」 江角泰俊さん
スタイリングまで考るように
――15~16年秋冬に、パルコが運営するクラウドファンディングなども活用して海外展を開始した。その後の進捗は。
15~16年秋冬にニューヨークの「PR01.ショールーム」に参加し、16年春夏からは同ショールームでパリ展もしています。
最初のシーズンの海外卸先は5社。初回で香港のハーベイニコルズが決まったのが大きい。消化率もいいみたいで、買い付け金額も徐々に上がっています。受注には至っていませんが、リバティやネッタポルテなども毎回来てくれています。
ブランドを知ってもらうのに3年はかかるとよく言います。日本でも最初の3年は厳しかったから、海外展も3年は同じ場所でやり続けるつもりです。
予算はクリアしていますが、当初の期待としては、現時点で更に2~3社広がっていてもいいかな、と思っていました。海外売り上げは全体の約1割なので、17年春夏展で更に5社ほど増やしたい。
――難しさを感じるのはどのような点か。
今後、まず超えないといけない課題はサイズです。海外バイヤーはXLまで要望しますが、日本では作ってもLまで。オーダーシートにXLを入れても、数量がまとまらなくて断ることもある。日本とアメリカではグレーディングの形式も違います。
その点、ニットはサイズの振り幅があるし、得意商品でもあるのでいいですね。海外と日本とでは、売れるアイテムも異なります。特にハーベイニコルズは強いデザインを好む。今後、卸先が増えて数量がまとまればXLも生産できるようになるし、海外が好む強いものももっと作れるようになると考えています。
――ここ数シーズンは、スタイリストとの取り組みを強めている。海外ブランドでは、デザインコンサルタントとしてスタイリストがブランドに関わるのはよくある手法だが、日本のブランドではショーやカタログのスタイリング以外はあまり聞かない。
以前は、あまりスタイリングを考えてデザインをしていませんでした。でも、バイヤーは展示会で商品を見ながらコーディネートを組み立てていきます。彼らの立場に立って、店に商品をどう置くかを意識して服を作るように変わってきたんです。
そうした考えの中で、主菜と前菜みたいに、メインピースに対して合わせやすいアイテムも作るようになってきています。MDバランスを学ぶために、一時期は外部MDと契約していました。
今はスタイリングを見据えたデザインをするために、スタイリストの仙波レナさんと組んでいます。自分たちだけでデザインするとどうしてもマニッシュになるから、そうやって女性の気持ちを取り入れていかないと。
――17年春夏はショーのスケジュールを前倒しし、8月末に東京でフロアショーを見せた。
前回ショーを行った16年春夏は、ショー開催時には展示会も終わっていて、ショーがシーズンの最後のイベントでした。それでは意味が無いと感じたし、続く秋冬物の企画期間が短くなってしまった。それが今回スケジュールを早めた理由です。
海外でも発表した方がいいと営業担当には言われましたが、まずは日本でしっかりやりたい。いま立ち上げ7年目なので、焦らず、10年目を一つの目処にしています。焦って海外で発表をして、出戻るのは避けたいですから。やるとしたら、海外卸先が20社まで増えて、発表の必要性を感じた時です。
◇16~17年秋冬の海外卸し先社数=9社
◇代表的店舗=香港のハーベイニコルズ、米スタジオ・セバスチャン
連載おわり=この連載は五十君花実が担当しました
【繊研新聞16年9月8日付けに掲載した記事を、一部加筆修正して掲載しています】
(ポートレート撮影=加茂ヒロユキ)