東京のデザイナーブランドのプレフォールで、クラシックでエレガントな要素が目立っている。といっても、直球のクラシックではなく、ハズシを加えて軽やかな印象に仕上げているのが東京らしい。プレコレクションとメインとでデザインに強弱を付けることなく、プレでもブランドらしさを全開に表現するブランドが多い。
■アカネ・ウツノミヤ
「アカネ・ウツノミヤ」(蓮井茜)は、異素材切り替えや布の重ねで見せるモダンアートのような感覚に磨きがかかっている。ストライプ柄のシャツ地を切り替えたボリュームシャツに、複雑なカッティングで布が重なったり、垂れ下がったりするシルク・綿のラップスカートやドレス。千鳥格子調のツイードといったクラシックな素材を使っていても、パワフルなレイヤードや配色の切り替えリブで、ぐっとプレイフルでモダンなイメージにしているのがこのブランドらしい。
■タロウ・ホリウチ
「タロウ・ホリウチ」(堀内太郎)は、20世紀初頭のクラシックなイメージと、持ち味である未来的な感覚をミックスしている。象徴的なのが、アルミの蒸着でフィルムのような質感を出した花柄プリント。フューチャーリスティックだが、それをボウブラウスやマーメイドスカートといったシックなデザインに落とし込む。手仕事のぬくもりを感じさせるシャーリングディテールが「宇宙の重力波の波動からイメージしたもの」だったり、一見ノスタルジックなギンガムプリントが、ぐしゃぐしゃと立体感のあるコラージュ柄になっていたりと、正統派に少しずつズレを加えて、違和感を盛り込んでいるのが面白い。
■ミュベール
「ミュベール」(中山路子)は、貴族的な要素とプレッピーとを混ぜ合わせた。テーラードコートは、ノーブルなヒョウ柄ファーの襟だけでなく、リボンモチーフのフロントボタン、バックに入れた天使やハート柄の刺繍と、過剰なほどの装飾を盛り込んでいる。ベルスリーブのシルクブラウスや、本来はカジュアルアイテムのスウェットトップにも、華やかな刺繍を施し、ミュベールらしい表情に変えている。
■ケイタ・マルヤマ
「ケイタ・マルヤマ」(丸山敬太)は、今季からプレコレクションを始めた。60年代のスウィンギング・ロンドンを着想源に、華やかな世界をプレコレでも主張する。様々なプリントや刺繍、ニットの編み柄などの手法で取り入れた、チョウのモチーフがポイントだ。そこに、チャイナディテールのブラウスやプレッピーなキルトスカートをミックスし、ケイタ流にこなしていく。〝濃い〟アイテムが充実するが、ビッグサイズのシャツなど、初心者にも取り入れやすいアイテムも揃えた。
-17年秋冬メインコレクション-
■ミュラーオブヨシオクボ
「ミュラーオブヨシオクボ」(久保嘉男)は、秋冬物展示会スケジュールを従来よりも早め、パリ展の前に東京展を行った。引き続き、毛足の長いカットジャカードやオパール加工のベルベットといった凝った素材を使い、キルティング素材などのユーティリティー要素とミックスしていく。いつも以上に複雑なレイヤードが特徴で、ビンテージのムードも色濃く漂う。ラグのような質感のビッグフォルムコートや、花柄と小紋柄を切り替えたロングドレスが象徴的なアイテム。プレコレは企画していないが、白いブラウスやカットソートップ、デニムアイテムで構成するカプセルコレクションを揃え、4~5月にプレコレ代わりに投入する。
■ロキト
「ロキト」(木村晶彦)は、アールヌーボーとアールデコを行き来する作風のアイルランドの作家、ハリー・クラークの挿絵からイメージを広げた。シックな中にどこかグロテスクな要素やゴシックなムードが漂う点が、ブランドイメージと合っている。オパール加工で花や星のモチーフを浮き上がらせたベルベットのベルスリーブブラウスや、モール糸のジャカードでダマスク柄を表現したロングブルゾン、星や十字架モチーフを刺繍したチュールドレスなどが揃う。ここ数シーズン、強いデザインを増やしているが、「前はデザイン過剰だと言っていたバイヤーが、やはり買いたいというケースが増えている」という。