海外進出では、色々な問題が多く発生します。
お金の回収やお店とのコミュニケーション、ロジスティックの問題等々日本では予知できないような問題がたくさん待ち受けています。
私はもう25年イタリアに住んでいて、仕事もイタリア人の中でやってきているので、問題が少しでも起こらないように、かなり先回りしてその予防をする事が身にしみついていますが、それでも考えられないような問題がたまに起きます。
JAY PROJECTの出展者の方はかなり細かい事にも注意する私を見て「なぜ、そんなにまで!?」と思っているかも知れませんが、何重にも予防していないと、どこかで問題が起こってしまいます。
この夏、これまでのイタリアでの仕事の中でも一番ひどいのでは、と思われるような問題にあいました。
日本にいる方のブログやFACEBOOKで、荷物が1日遅れて届いたりすると、凄い問題のように書かれているのを見かけますが、残念ながらヨーロッパでは1日遅れるというのはそんなに大変な問題でもないくらい普通のことなのです。
以前、お手伝いさせていただいていたブランドの方が、郵便局の早い便EMSでサンプルを送られた事があるのですが(問題が多いので、サンプルのように大切な物はこれでは送らないようにお願いしているのですが) 、ちょうど正月が重なり、時間がかかり過ぎて展示会にサンプルが間に合わないという事がありました。
色違いの同じ商品を出展者の方が手荷物で持ってこられたので、それほど大きな問題にはなりませんでしたが…この場合、日本の郵便ではなく、イタリアサイドの方に問題があると思います。
この8月、ロンドンの展示会に出展する為、初めてコレクションをフォワーダー(運送業者)を使い送りました。
これまでは物を送ると問題が起こる可能性が高いので、なるべく私が持って移動するようにしていました。多い時には一人で23KGのスーツケース5個持って移動した事もありました。
そのときはドイツからミラノの空港に着き、300円ほどするカートを借りようとしたのですが、まず、小銭が無いので使えず、まわりの職員にお金を替えてもらえるか訪ねた所、誰も持っておらず、職員が教えてくれた1つだけある両替機は壊れていて、最終的に5つのスーツケースを2つずつもって、少しずつ前に進みながら出口に行ったという経験かあります。
日本だと50mくらい運んで荷物を置き、残った荷物をまたそこまで持って行っても問題は無いでしょうが、イタリアは泥棒が多いんです…涙。あまり離れた所においていると取られてしまう可能性があるのです。
そんな私の様子を見ていた出展者の方が「大変だろうから送ったらどうですか」という事で初めてこのロンドンの展示会の時にサンプルを送る事にしたわけです。コレクションを送るのは特に気を使います。そのコレクション自体の価値よりも、これでオーダーを貰い、それでお金が生まれるからです。
荷物をロンドンに送るのに4、5日かかるという事だったので、余裕を持って少し早めにサンプルを送り、パッキンにもしっかりと大きくはっきりといつまでにどこに着くようにと書き、送り状も書き間違えがないように何度も確認しておきました。
ちょうどその日にドイツへの出荷もあったのですが、万が一そのパッキンと間違えられては困るので、先ず先にドイツに送る荷物だけをドライバーに渡し、そのあとにロンドンへの3つの荷物を持ってきて無事出荷。何も落ち度はありませんでした。
荷物が着くであろう日の朝にメールで「送りでの問題有り」との事、メールにはリンクが張ってあり、ロンドンにもう荷物は着いていて、荷物を配達しようとしたのだが、うまく配達できなかったとの事で、そのリンク上にいくつかあった中の、「送り先に再送する」という欄をクリックしたあとに、オンライン上のこの荷物の情報をよく見てみると、フォワーダーが送り先を書き間違ってオンラインに記入していたのを発見。
ポストコードも自分で書いた物と全く違い、それを電話で連絡するとメールで正しい住所を送ってくれとの事、すぐにメールを送ったのですが、返事が無いので、何度かメールを送り直し、その後も返事が無かったのでもう一度電話、それでも返事が無いのでまたメールでの確認、最終的には4、5回メールを送ったにもかかわらず一切返事無し。
ヨーロッパではこちらが客でも向こうから返事が無い事は普通で、こちらの方で注意しておかなければなりません。最終的に先方は責任を取らないし、責任は誰が持つのかという事よりも、ちゃんと自分の思い通りに物事が運ぶのが大切なので、最終的には自分で動かなければなりません。
その次の朝早くロンドンについて展示会のスタッフに聞いてもまだ荷物は着いていません。会場でメールを見てみるとまた昨日と同じ内容のメールが、4度もメールを送ったのに…間違った送り先の住所も変更もされて有りません。
直ぐにイタリアのフォワーダーに電話をし、どのようにすれば荷物を受け取る事が出来るのか聞いた所、このフォワーダーのイギリスでのパートナーはFEDEXで、彼らはFEDEXにこの荷物に関しての状況を聞くには、オンライン上で送るメーッセージでしかできないとの事。それで直ぐに展示会のオーガナイザーの携帯番号を教え、何か問題があった場合、そちらに連絡するようにメッセージを送ってもらいました。
次の日の展示会に絶対に間に合うようにしてもらわないと行けません。
しかし待っててもこないかもしれず、荷物はもうロンドンに有るのは分かっているので、ロンドンの倉庫に直接荷物を取りに行こうと、どこに荷物があるか聞くため直接ロンドンのFEDEXに連絡したのですが、私はイタリアのフォワーダーの顧客である為、イタリアのフォワーダーからの依頼がなければロンドンのFEDEXでは何も出来ないという事らしく、もう一度イタリアのフォワーダーに連絡、前と同じでオンライン上でのコミュニケーションしか出来ず、メッセージはもう送っているのでもうフォワーダーのほうでは何も出来ないとの事。最終的にブースのセッティングも出来ず、次の日に荷物が着く事を祈りながら会場を後にしました。
次の日、展示会が始まる時間になっても荷物は来ず、またイタリアのフォワーダーに連絡、昨日と同じで、唯一フォワーダーで出来る事はイギリスのパートナーFEDEXにメッセージを送るのみ、こんな感じで2日しか無い展示会の1日目が終わりました。
展示会ではオーガナイザーが私の紹介している3ブランドをかなり気に入ってくれていて、入場者が行きと帰りに必ず2度通る一番良い場所をJAY PROJECTのスペースにしてくれ、これ以上のお膳立ては無いくらい恵まれていました。
はじめ展示会のオーガナイザーやスタッフ、他の出展者達は、うちのブースの前を通るたびに「荷物は届いた?」と心配してくれていたのですが、展示会初日も終わり頃になって来ると、こちらがもっと気を悪くしてはまずいと避けて通っているのが分かりました。
2日目になり、今日は届くかと思ってずっと外でFEDEXを待っていたのですが、午後3時になっても来ないので、自分がいなくなった後に荷物が会場に着き、また問題になっても怖いので、イタリアのフォワーダーに連絡して荷物をミラノに送り返すように手配しました。
せっかくオーガナイザーの好意で展示会場で一番良い場所を貰い、この展示会の前にあったPITTI UOMOでは、特にイギリスのバイヤーに好評だった3つのブランドのコレクションを持って行ったにもかかわらず、このフォワーダーのおかげでコレクションを見たがっていたバイヤーにコレクションを見せる事も出来ず、とても不本意な気持ちでミラノに戻ってきました。
ロンドンからミラノには4、5日で荷物が戻って来るという事で、その2週間後にまわる予定にしているドイツに行く時には間違えなくコレクションが戻って来ると思っていたのですが、最終的にこのドイツの営業に行く日にも荷物が帰ってこず、ロンドンから送り返すように連絡してから26日後にサンプルがミラノに戻ってきました。
その荷物が帰ってこなかった理由は、送り返した日の少し後、イタリアはもうこの時期ヴァカンスに入ってしまい、イギリスからイタリアに来るトラックは3週間ちょっとの間止まっていたとの事。これを知ったのはドイツに行く少し前で、それまでなぜ荷物が帰ってこないのかもフォワーダーは知りませんでした……
すべて書くと長くなるので、かなり要約しましたが、今回は上記以外にもさまざまな問題が有りました。
海外では何か問題が起こっても、日本のように親身になって解決しようと思ってくれません。ですので、こちらで問題が起きないように何度も確認をしたり、連絡を頻繁にしておかないと行けません。
今回は始めてサンプルを送るという事でいつも以上に注意したつもりでした。それでもこんな事になってしまうのです。今回学んだことはフォワーダーを頼む時には、海外に行ってその国で問題が起きた場合に現地でも問題が対処できるように、なるべくグローバルに動いている会社を選んだ方が良いという事と、荷物が重くてもなるべく手荷物で持って行った方が良いという事です。
ただ飛行機での移動の場合、荷物を無くされたり、他の空港に行ったりする事もあるので、移動は直行便の方が良いと思います。それと出来れば少し現地に早めに入った方がよいと思います。
自分のせいではないのですが、早く荷物が戻ってくるようにと出来る事はすべてしたのですが、最終的には何も解決できず、ミラノの周りのみんなはのんびりとヴァカンスに出ている時期なのに毎日何度もフォワーダーに電話をかけるはめになった、とても長かった8月の出来事です。
坪内隆夫 つぼうちたかお 東京モード学園デザイン学部卒業後渡英、1年後に渡伊。デザイナーとして活動をはじめ、ミラノにてオーダーショプ「TAKAO MILANO」をオープン。2004年2月から2007年9月まで年に2度、ミラノ市の協賛を得て、ミラノファッションウィーク開催中に新人デザイナーを中心とした展示会UPSIDE MILANOを主催。その後、ミラノのショールーム、ファッションガイドブックへのコンサルタントを行い、2012年1月のPITTI UOMOから日本のメンズブランドのヨーロッパでのセールスプロモートをするプロジェクトJAY PROJECTを開始する。