1830年創業で米国最古のアウトドアブランドとして知られる「ウールリッチ」が、今秋から最上位ライン「ウールリッチブラックレーベル」を始めた。アウトドアウェアとしても街着としても使えるコレクションで、従来のラインに比べると「アーカイブの掘り下げ方や採用する素材、生産背景の幅広さは段違い」(ウールリッチジャパン)だ。同レーベルのクリエイティブディレクター、トッド・スナイダー氏にデザインのこだわりを聞いた。
(杉江潤平)
ウールリッチはクラシックで、常にアメリカンスタイルの一部であったという歴史そのものが大きな資産です。私はそれを現代、そして未来にも多くの人に好かれるようにしたいと思っています。そのためには、ヘリテージ、モダン、ラグジュアリー、テクノロジー、ストリート感の五つの要素を融合することが重要です。そのために私の30年に及ぶこの業界での経験と知識、人脈をフル活用しました。
例えばこの赤いチェックのジャケットは、元々はハンティングジャケットでした。オリジナルのファブリックは分厚くて、硬くて重いのですが、イタリアのリリア社に依頼し、柔らかく、軽い素材感のカシミヤ・ウール地に仕上げています。こうすることで、街中で着ても違和感の無いようにしました。
ファッションにとって、アウトドアは最上位の概念になったのではないでしょうか。一方で、ラグジュアリーブランドがアウトドアコレクションを出すことには懐疑的です。そこに伝統や歴史があるかどうかが最も重要なのに、それが無いわけですから。どのブランドよりウールリッチは歴史があり、受け継ぐべき遺産が多い。だからこそ、私はウールリッチからの仕事を受けたのです。
デザインで心掛けるのは、「購入は投資」という前提です。今だけでなく、将来も着ることができ、時間が経つにつれて価値が高まる物作りを意識しています。ファッションですから、はやり廃りは当然ありますが、私としてはタイムレスであることが重要。ブラックレーベルを、後の世代にも受け継がれるものにしたいですね。