ニューヨークから北に約2時間行ったところにあるキングストン。今年6月3日付けの本紙最終面に掲載された「いまキングストンが熱い!NYの旧州都がクリエーターの聖地に 創作スペース確保に行政も動く」で紹介したが、キングストンがクリエーターの聖地になったのは、元々インテリアデザイナーたちが「町おこし」のような活動を始めたことに起源を発している。そのキーパーソンは、「キングストン・デザイン・コネクション」を立ち上げたインテリアデザイナーのマリリン・ダモアさん。キングストン・デザイン・コネクションの活動の1つが、2018年からコロナで中断していた年を除いて毎年10月に開催してきた「キングストン・デザイン・ショーハウス」だ。デザイン・ショーハウスは、インテリアデザイナーたちがあてがわれた部屋を思い思いにデザインし、それを一般公開するもの。キングストン・デザイン・ショーハウスは、「デザインを通じてコミュニティーを構築する」をスローガンとしている。
デザイン・ショーハウスが何故、コミュニティーを構築することになるのか。まず、地元のインテリアデザイナーは自分の作品をつくって、多くのメディアと消費者に見てもらえる。プロのフォトグラファーが個々の作品の写真を撮ってくれるので、その写真を売り込みに活用し、新たなクライアントを獲得することが可能になる。デザインを完成させるために、地元のさまざまな業者と組み、材料を手配し、施工をしてもらうことになるので、地域の業界全体に好機となる。入場料は1人22ドルで、その売り上げは、年によって100%または一部が地元の非営利団体に寄付される。今年は5000ドルが地元の非営利団体に寄付され、残りは別の基金集めのイベントのために使われる計画だ。5回目となった今年の来場者数は1日400人から450人。2019年は1日約1000人が訪れていたそうだ。
今年、デザイン・ショーハウスの会場に選ばれたのは、キングストンの住宅街にあるこの家。目立つ装飾を外壁に張り巡らし、デザイン・ショーハウスの会場であることがわかりやすい。この家は1,901年に建てられたもので、女性が2人の姪と住んでいた。その後オフィスなど商業用に使われてきたが、最近ある一家が購入した。その持ち主が2ヶ月にわたってデザイン・ショーハウスに家を提供し、その間デザイナーたちが作品を作り上げた。終了後は、家の持ち主が買い取らない限り、デザイナーはすべてを撤収しなければならない。家の持ち主にとっては、趣味にあわない部屋になる可能性はあるものの、壁がきれいに塗り替えられたり、タイルがきれいにとり替えられたり、1つしかなかったバスルームが2つになったりしているのだから、悪い話ではないのかもしれない。
今年はファサード、ランドスケープ、廊下のデザインも含め、12社が参加した。主宰するマリリン・ダモアさんによると、毎年80~90の応募があるという。デザイナーたちはそれぞれ、参加費とデザインを実現するのにかかる費用を負担する。ただし、毎年参加デザイナーのために寄付してくれるペンキ会社や照明の会社がある。今年は、壁紙やシャワー関係の機材を寄付した会社もあった。
私が特に印象に残ったのは、こちらの部屋。竹を組んだものを天井から吊るし、そこからドライフラワーをドラマチックに垂らしている。インテリアデザイナーは通常、クライアントの要望に沿うことが仕事だが、デザイン・ショーハウスでは自分のやりたいデザインをする。この部屋をデザインした「クリエーチャー・オブ・プレイス」のデザイナーさんは、「私は普段はミニマリストなのよ」と言っていた。テーブルの上に並べたキャンドルとオブジェも可愛い。
新しくつくられたシャワールーム。壁にはテレビが内蔵され、天井には音響設備がある。窓は、中から外はよく見えるが、外から中は見えない。担当したデザイナーのマイケル・ギルブライドさんは、「ネットフリックスを見ながらシャワーを浴びることもできるし、音楽に合わせて裸で踊っていても、通りからは全然見えないんだよ」と話していた。
キッチンでは、料理教室などのイベントも別料金で開催される。ウッドを多く使いながら、明るいイメージのキッチン。冷蔵庫までウッドで覆われていた。
(写真:Phil Mansfield Photography)
89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)