コロナと戦うNYの3つのキーワードと消費の現場(杉本佳子)

2020/04/01 12:21 更新


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新型コロナウイルス肺炎感染者はアメリカが最多となり、その中でも一番多いのがニューヨークだ。3月30日4時半時点での感染者数は38000人以上で、死者数は960人以上。同日午前10時半時点の感染者数から換算すると、その6時間の間に2分9秒に1人の割合で亡くなったことになるという。31日4時半に発表された感染者数は43139人だった。

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ニューヨーク市で、最初に感染者が確認されたのは3月1日。それが1ヶ月で43000倍以上に増えるとは、唖然とするばかりだ。しかもピークはまだ2週間先で、アメリカ全土でのコロナ死者数は10万人から24万人が予想されている。今のペースでいくと、おそらくその半分はニューヨークだ。ニューヨークではジャビッツコンベンションセンターとセントラルパークに野外病院がつくられ、海軍の病院船が到着し、さらにUSオープンが開催される競技場も野外病院として使用されることになった。

ニューヨークは州と市をあげて、感染の広がりを少しでも抑えるために「ソーシャル・ディスタンシング」(人との間に最低1.8メートルの距離を開けること)を繰り返し呼び掛けている。今、ニューヨークを走るバスは、運転手に近づけないように規制線が張られている。通常は前から乗って料金を支払うが、現在は後ろから乗降し、料金は無料。換気のために窓は開けっぱなしだ。


スーパーマーケットやドラッグストアは、店内が混み過ぎないように入場制限をしているため、店の前に距離を保って並ぶ人々の行列が目立つ。レジに向けて並ぶ場所の床にはテープが張られ、人々はそれを目安に距離を開けて並ぶ。


ドラッグストアのCVSでは、レジ前に箱を置いて、お客とレジのスタッフが近づき過ぎないようにしている。レジのスタッフとお客を遮る、透明の仕切りを設置したスーパーマーケットもある。


オーガニックフード中心に人気の高いスーパーマーケットのホールフーズマーケットでは、店内にソーシャル・ディスタンシングを注意喚起するサインを設置している。


ホールフーズマーケットは総菜、オリーブ、ナッツや乾燥豆などを自分で好きなだけとるセルフサービスのコーナーを段階的に廃止してきた。最近では店に行くと、お客が手にするカートと買い物かごを消毒液でふくスタッフがいつも見られる。これはお客に安心感を与える。レジの前の床にもやはりテープが張られているが、この写真は3月25日に撮ったもので、この時、私はこの男性の隣の列に並ぶとソーシャル・ディスタンシングにならないと思い、1つ列をあけたところに並んだ。


3月31日に行ってみたら、1列置きに並ぶことができるように隔列が塞がれていた。これなら安心。今回の事態は誰も経験したことがないので、状況をみながら「このままじゃまずい!」と思ったことを1つ1つ改善している感じだ。

「ソーシャル・ディスタンシング」と共に、キーワードとして浮上しているのは「コンタクトレス」だ。コロナの場合、感染していても症状が出ないことがある。だから、誰が触ったかわからないものに非常に敏感になっている人が多い。長年マスクをしている人が皆無だったニューヨークで、マスクとラテックスなどの手袋をして歩く人がいつのまにか増えた。サングラスをかけたり帽子をかぶったりして出かける人も目立つ。

郵便物が届いても誰が触ったかわからないから、家に入れる前に中身を出して封筒やパッケージを捨てる人、封筒を消毒液で消毒する人、一定時間触らないでほおっておく人などがいる。外で買ってきたものも同じだ。しばらく前だが、クラフトビールの会社が出荷するビールの瓶を1本1本消毒してから出荷していると、テレビのニュースで報道していた。そういう、今まで考えられなかったアピールが必要になってくる。

酒屋の営業は「重要なビジネス」として認められているが、早々に配達のみに切り替えた酒屋もある。不特定多数のお客が入って瓶を触ることに危険を感じるようになったのだろう。「コンタクト(接触)」をとにかく0か0に近づけること、それがお客に安心と信用をもたらす。以前は受け付けていた返品・返金を、現在は一切廃止している店も多い。返品されてきた商品に感染者が触ったかもしれないリスクがあるからだ。


食品の宅配も、「コンタクトレス」をアピールする会社が出てきている。ドアの外側に配達物を置き、それを電話やテキストでお客に伝える。お客がドアを開けた時にはそばに人はいない手法だ。

ニューヨークでは、食料品と医薬品の買い物で出かけることは認められている。多くのスーパーマーケットでは、シニア層のみが入れる時間帯を早朝に設けて、シニア層が若い人たちと接触しないで買い物できるようにしている。それでも、外に出て感染するリスクを心配する持病のある高齢者は多い。そうした人々のために食品や日用品の買い出しを無料で代行する若者のボランティアグループ「インビジブル・ハンズ」が生まれたが、彼らもドアの外に置いて直接手渡ししない方式という。

現金決済も感染者が触ったかもしれないものに手を触れることになるので、キャッシュレスはますます進むだろう。無人化、機械化も増えるだろう。シェアオフィスなどのシェアカルチャーが生き残っていけるかどうかは、感染の恐れがまったくないことをお客にいかにアピールできるかどうかにかかっている。

こうして、同居している家族以外と会うこと、人と触れ合うことがまったくなくなっているが、気持ちは繋がっていると思えなければ精神的に続かない。コロナの流行と共に、オンラインミーティングアプリの「ズーム」を使った「バーチャルハングアウト」が大流行し始めたが、会っていなくても社会や友人と繋がっていたいという気持ちが強いからだ。ビジネスを続ける上でもお客と繋がる「ステイ・コネクティド」(繋がり続ける)は、非常に重要だ。

日本理化学工業の「キットパス」は、窓に書いたアートをインスタグラムで#windowartのハッシュタグと共に投稿してもらい、毎週優勝者を決めて、窓にも描けるクレヨン「キットパス」をプレゼントするキャンペーンを始めた。キットパスの北米の代理店であるフォーカスアメリカ社の蝉本睦(あつし)社長は、「子供たちの学校が閉まってしまってから結構たちますので、せめて家の中から外を見てもらいたい、こんな時でもアートは子供にとって重要だと思うので」とキャンペーンを始めた動機を語る。現在、キットパスを売る店はほとんど閉まっているが、オンラインを中心にこの最中でもオーダーは入っているという。

フォーカスアメリカ社提供

ソーホーのファッション関係の店が全部閉まり、ウインドーに板を打ち付ける店、商品を売り場からすべて撤去する店、そのままにしてある店とあった中で、ゴールデングースは閉店した店のドアに、お客に対するメッセージを貼り出していた。今の時期、モノを売ることはできなくても、お客となんらかの形で繋がり、メッセージを発信していくことは非常に重要だ。今それをどうやるかが、コロナ後のビジネスを左右するだろう。


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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ

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