【トップインタビュー】田村駒 植木博行社長

2018/04/27 03:58 更新




 田村駒は来年創業125周年を迎える繊維専門商社。強みとするアパレル製品ODM(相手先ブランドによる設計・生産)事業に加え、生地の販売やリビング事業、最近では生活関連など資材事業が伸長。時代の変化に合わせて事業領域を広げてきた。4月から新3カ年経営計画がスタート。最終年度の20年度には連結で売上高1300億円、経常利益35億円を狙う。

人口動向の変化に対応して

―今の事業環境をどう見ますか。

 大きな転換点です。これから日本では18歳以下の人口がどんどん減る一方、高齢者の数は激増します。人口動向なので急な変化ではありませんが、でも確実に変わります。田村駒の強みのひとつがヤングレディースカジュアル向けのアパレルODMです。この市場が縮む一方で高齢者向けの衣料事業ではチャンスが広がり、団塊ジュニア世代も50代に近づいてくる。こうした人口や市場の動向に対応した事業、サービスを提供することが大事です。田村駒はこれまでも時代の変化に合わせて住宅関連資材など様々な引き出しを作り、成長してきました。

 ミドル・シニア向けの衣料品ではイージーケアや防臭などの機能素材の開発に力を入れます。消費者が変わるのだから当然好みも変わる。SPA(製造小売業)顧客からもこうしたニーズが増えてくるはずです。

―新たに狙う市場は。

 大きな市場になる介護やその周辺です。田村駒の強さは衣料だけではありません。得意中の得意であるリビングが力を発揮しそうです。最近は苦戦していますがリビングは「介護」「睡眠」を切り口に再び伸ばせる分野。新たな商材や部材をサービスまでを含めたトータルパッケージで提案することや、ネットやTV通販など新たな販路の可能性を探ります。

「介護」「睡眠」をキーワードに成長が期待されるリビング製品

アパレルODMの幅を広げる

―新中計の内容は。

 人口動向の変化への対応以外では「新たな分野、領域での拡大」も強めます。おしゃれなゴルフウェアなどのファッションスポーツ関連、ヨガやフィットネスクラブで着用するウェアなど「健康」をテーマにした分野に注力します。レディースフォーマルウェアのモノ作りの強みを生かしたメンズ、子供分野でのアウター事業も拡大しています。

 生産背景も整備します。中国では環境規制が厳しくなり、人件費も上がっています。ベトナムやミャンマー、バングラデシュ、カンボジアなどへの生産シフトを進め、顧客のニーズや商材に応じて作り場を使い分けます。消費者の低価格ニーズは続いています。この市場から降りるつもりはないので、どうロスを減らすかの勝負です。

 当然海外事業も伸ばしますよ。テキスタイル輸出に加え、昨年ドイツ・ミュンヘンに開いた駐在員事務所を生かしてスポーツなどをテーマに欧州での製品事業を拡大します。タイでは生活雑貨の販売や資材関連を伸ばしたい。様々な仕掛けや種まきが生きてくるでしょう。

タイの日系百貨店に出店する生活雑貨店の「SIKURA」

生活関連資材を新たな柱に

―非繊維分野が伸びてきた。

 あくまでベースは衣料事業です。モノ作りの力をさらに強めるなど、やるべきことはたくさんあり、衣料分野での維持、拡大はできます。しかしヤング層の減りからみても衣料だけで十分とは言えません。前の中計期間中にグッと伸びたのが資材です。住宅用壁材など住宅関連資材はもともと強く、特に好調なのが生活関連資材。プラスティック成型と家電組み立て機能を有する山城工業グループとミツミコマの融合により、新商材の開発と既存商権のシェア拡大などで可能性を広げます。すでにフィルター生産の経験を生かして冷蔵庫、掃除機、空気清浄機などの部材生産から掃除機については完成品の生産も増えつつあります。各資材関連会社の力を上げることに加え、商社的に各社の得意分野をアレンジ、トータルコーディネートして相乗効果を出すことができます。

光を熱エネルギーに転換する「フレアー・メガヒートファブリック」

―経営で意識していることは。

 収益性を安定させながら、新しい何かを探すことです。新中計で掲げた数値目標は全社員の日々の営みの積み重ねです。田村駒の財産は人に尽きます。能動的に働く中から世の中に役立つ新しい商品やサービスが生まれ、やりがいがあるからこそ持続が可能です。新入社員には長く働いてもらいたいのでOJTに加え、研修も充実しています。自前でビジネススクールを立ち上げ、10年以上が経ちました。繊維や貿易、製品に関する知識などカリキュラムは年々充実し、今では約30科目に増えました。顧客の方が勉強のために参加することもあります。

 チームで勝つには、一人ひとりの頑張りやモチベーションが大事。まずは一対一で負けない。それが合わされば全体の力が高まります。サッカーと一緒ですよ。

2021年トピックス

キャッシュレスが大きく広がる

 東京五輪後の2021年、社会は劇的に変化しているでしょうね。世界から人が集まる五輪をきっかけに日本でもキャッシュレス化が大きく進みそうです。すでに海外展示会ではサンプル代をスマホで決済する例も生まれています。生産現場ではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の導入で省人化が進みます。田村駒の事業では、人口動向の変化でアパレルODMの幅が広がり、資材の伸びやリビングの復活が想定されます。

 企業の成長には個人のモチベーションが大事です。新しいことに投資し、そこから生まれるワクワク感を引き出します。

Profile
1956年 生まれ、神戸市出身。79年 京都工芸繊維大学繊維学部卒、同年田村駒に入社、2000年 衣料第1部長、03年 執行役員経営企画室長、07年 取締役、11年営業本部副本部長兼第1事業部長、同年6月 常務取締役、14年 営業本部長、15年 専務取締役、17年6月 代表取締役社長に就任。

田村駒株式会社

【URL】http://www.tamurakoma.co.jp/

(繊研新聞本紙4月24日付け)




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