より“モード”を意識した強いデザインへ
東京のデザイナーブランドの16~17年秋冬展示会では、「モード」という言葉や、それによって表現される強いデザインが鍵になっている。これまで、気の利いたコンテンポラリーテイストを提案してきたブランドも、今季は攻めたデザインを揃えている。世界中に広がる強いデザインへの回帰が背景にあるとともに、注目を集める国内外の同世代デザイナーに刺激を受けているようだ。今後、数シーズンのうちに海外進出を目指すブランドも多く、リアリティー重視の日本市場から海外へ視野を広げていることも、意識の変化をもたらしている。(五十君花実)
今季から「バレンシアガ」のアーティスティックディレクターに就いたデムナ・ヴァザリアは、まだ30代の前半。ヴァザリアと「アキラ・ナカ」のナカアキラや「ミキオサカベ」の坂部三樹郎は、アントワープ王立芸術大学の同級生だ。躍進する友人から受ける刺激は小さくない。また、「ファセッタズム」の落合宏理が、第3回「LVMHヤングファションデザイナープライズ」ファイナリストに残っていることも発奮材料になっている。
こうした動きと並行するように、コンテンポラリーゾーンの市場の変化も、少なからずデザイナーたちをモード志向にさせている。〝ドメコン〟(ドメスティックコンテンポラリー)と言われるように、日本では、ここ数シーズンで大手を含む多数のメーカーが同ゾーンに参入。ヤングブランドで活躍してきた女性ディレクターが、同ゾーンを目指してブランドを立ち上げるケースも目立つ。そうしたブランドと差別化するためにも、デザイナーたちはより強いデザインへと向かっている。
◇ ◇
アキラ・ナカは、日本の女性のリアルに寄り添ったもの作りを進めている。ただし、それは単に着やすい服ではなく、客が思ってもみなかったような挑戦をチラリと潜ませるデザインだ。16年春夏からそうした意識が強くなっていたが、16~17年秋冬はより顕著になっている。
圧縮ウールのベルテッドコートは、袖口に向かってボリュームを出したきものスリーブがポイント。ショートコートは、スリットの入った袖を後ろにねじって結ぶとケープのようになるデザイン。トレンドの袖の量感を取り入れつつ、日本人にもリアリティーのあるギリギリのバランスを追求した。
「今は調和したデザインではだめ。どうやって雑音を差せるかを考えている。秋冬はかなり強いデザインに振ったが、春物の店頭消化がいいこともあって、バイヤーは強いピースを買い付けてくれている」とナカ。プレコレクションとメーンコレクションを分けたことで、メーンではより強いアイテムを出せるようになった面もある。