バルーンフラワーブーケを日本にも広めたい――バルーンフローリストの田寺麻美さんは23年6月、細長い風船をひねって作るバルーンアートの花を使い、風船の花束を提案するブランド「バルームス」を立ち上げた。バルーンフラワーブーケ専門店、渋谷の風船花屋をインスタグラム上で開業し、〝映える〟贈り物や写真の背景、店舗装飾用に購入する人が増えている。
(河邑陽子)
企業からも依頼
バルーンフラワーブーケは、バルーンアート用の色とりどりの風船で花びらと茎を作り、何本かまとめた全長90センチ近い巨大な花束。バルーンアートの国際大会が開かれるタイを中心に、お祝いの装飾や贈り物として東南アジアで広がり、韓国では専門店が乱立するなど流行中だ。生花と違って水やりや花瓶に入れる手間が省け、分量感とインパクトがある点も人気という。
田寺さんがインターネットで、初めてバルーンフラワーブーケを見たのは23年春。「暗い話題が多い中、可愛くて幸せな気分になり、誰もが笑顔になる点が魅力で、一目ぼれした。華やかで記憶に残り、記録に残せる花束で、みんなに笑顔と幸せを届けたい」と独学で、3カ月かけて技術を習得。雑貨専門店を早期退職し、次の方向性を模索していた中、「新しい形のギフトとして日本でも広めたい」と、無店舗で風船花屋を開業した。
商品はチューリップ、デイジー、バラが基本で、ほかにヒマワリ、ラベンダー、タンポポなど。贈る相手の年齢や人柄、贈り手との関係などを聞き、写真も参考に花と茎の色の組み合わせを考え、個別にアレンジした花を3本以上の花束にして提供。1束2700円(税抜き)からで、インスタグラムで受注し、渋谷で手渡ししている。
初めは家族や友人の誕生日や記念日のサプライズの贈り物、インフルエンサーのSNSでの装飾用など、個人からの受注が中心だった。最近はコンサートの会場の装飾、韓流の人気俳優の写真集の美術協力、雑誌の撮影小道具用などとして、企業からの依頼も増えている。「育てるタオル」表参道店の周年イベントで店内装飾と集客施策用のプレゼントに採用されるなど、店舗やブランドの催しや販促で活用される事例も出始めた。
作り手の育成も
今後の目標は、「みんなが笑顔になり、記憶に残るギフトとして定着させつつ、企業向けのビジネスを拡大させること」。結婚式などのウェルカムブーケと来場者へのお土産など、セット提案も強化する。
並行して、オンラインのバルーンフローリスト育成講座の開講も計画中。専門的な知識と技を習得し、独立オーナーとして風船花屋を開業できるまでのビジネス指導も行い、全面的に支援する仕組みを考案していく。
「受講生が各自の夢を実現して力強く新たな一歩を踏み出し、バルーンフラワーブーケを使ったギフトの文化を各地域で広げていけるように支援したい。全国に風船花屋の店舗網を広げることが夢」だ。