事業が6店目にさしかかる頃、壁に直面しました。ネット通販の急成長で、全国どこでも同じ商品が手に入るようになり、私たちの強みだった独自の品揃えの価値が薄れていくことに気付きました。このままでは、お客様に選ばれる理由がなくなってしまう。そんな危機感から、オリジナル商品の開発に着手しました。
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大切にしたのは、ブランドの軸をぶらさないことです。アメリカンカジュアルの世界観、親子で楽しめるデザイン、動きやすさと丈夫さ、手の届きやすい価格設定。見た目重視でなく、日常に根差したリアリティーある子供服作りを心がけました。素材選びから縫製、着心地テストまで多くの工程があり、それぞれに小さな壁がありました。特に難しかったのは、機能性とかわいさの両立です。動きやすくて洗いやすく、でもデザインは妥協しない。理想をかなえるには、相応の工夫と情熱が必要でした。それでも、店頭で「このシリーズ、また出ないんですか?」とお声をいただけたとき、全ての苦労が報われる思いでした。
オリジナル商品は、私たちの価値観そのもので、お客様との信頼関係の接点でもあります。やがて、オリジナル商品を目当てに来店されるお客様が増え、単なるセレクトショップではなく、ブランドとしての自覚が生まれました。ブランドとはロゴや名前だけではなく、提供する価値そのもの。これからも、独自性と品質、お客様の声を大切にしながら、時代に合った本当に求められる服を作り続けていきたいと考えています。
(マーキーズ代表取締役 廣畑正行)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。