25年は繊維・ファッション業界を揺るがす出来事がたくさんありました。大きな盛り上がりも、継続的な懸念事項も。そんな25年の「『現代用語の基礎知識』選 T&D保険グループ新語・流行語大賞」には、繊研新聞でもたびたび取り上げてきた業界関連のトピックが複数ノミネートされました。25年に世間をにぎわせたあれこれは、今年どうなるのか。一部を選出し、〝半歩先〟の未来予測と次なる一手を探りました。
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トランプ関税
受注や設備投資減、他業種に悪影響
まずは「トランプ関税」。8月に米国トランプ政権による関税措置が正式に発動され、日本からの輸入品に課す相互関税は一律15%になった。
影響は各社に広がった。東レは、不確実性はあるものの世界景気への影響は限定的なものと想定。米国輸出の受注減など、通期でマイナス50億円を見込み、内訳は繊維20億円、機能化成品20億円、炭素繊維複合材10億円で、事業利益の下方修正の一因となった。ただ全社ベースでは下期の巻き返しを想定し、目標は維持する姿勢だ。
旭化成では、スパンデックス「ロイカ」が影響を受けた。島精機製作所は影響が出たが、落ち着きを取り戻したという。
上場リユース企業やインナー企業、スポーツメーカーなどからも売り上げの減少や収益の悪化といった影響を指摘する声があり、受注減や設備投資の抑制などが継続するとみる企業が目立った。26年は、ユーロ高や日中関係の悪化に伴う訪日客の減少などが懸念として挙げられている。
二季
気候変動対策は暑熱と暖冬の2軸
気候変動の影響を受けて秋も長引く暑さや暖冬傾向で、従来の四季から春秋を抜いた「二季」。気候変動に向けた素材を打ち出す動きが目立った。
宇仁繊維は「長引く残暑でジャケットの出番が減り、気温に合わせて長期間着用できるシャツの提案が目立っている印象」として、シャツ向け素材を充実。細番手のスパン糸を使ったシースルーや、縦しわ加工を施したローンなどを揃えた。

見た目で秋冬らしさを打ち出す動きもある。
レース専門商社の落合レースは、視覚で秋冬を感じられる刺繍・レースを打ち出した。キルトは通常の3分の1から半分ほどグラム数を減らし、軽さを演出した。
機能性も重要だ。帝人フロンティアは26年春夏向けで高通気性や紫外線遮蔽(しゃへい)性、撥水(はっすい)性など自社の機能素材を五つのカテゴリーに分けて訴求する。高機能素材「爽多」は、横あるいは縦にスリット状の高通気部分を設け高い通気性を実現した。
気候変動による影響は26年も継続するとみる企業が多い。見た目や機能性などによる暑さと暖冬への対応は、引き続き求められている。
ぬい活
新たなコミュニケーションツールの登場
「ぬい活」とは、推しのぬいぐるみをカスタムしたり持ち歩いたりして楽しむ活動のこと。布との関係が深いブームなこともあり、ファッション業界にも大きな影響があった。
25年はアパレルブランドと人気キャラクターが協業したぬいぐるみの販売が相次いだ。主な客層が若者のウィゴーでは「ぬい服」やぬいぐるみを見せながら持ち運べる透明のポーチなど、ぬい活に特化した商品を販売し、好調だった。
ぬいぐるみ愛好家集団「ぬいぐるみドリーム!」を運営する高松直さんは、ぬい活の拡大の背景には「旅行先やイベント会場でぬいぐるみを撮影する〝ぬい撮り〟の流行がある」とみる。仲間とお気に入りを持ち寄って撮影し、SNSに載せるなどのコミュニケーションツールにもなった。

26年も需要は継続しそう。高松さんは「AI(人工知能)で推しのぬいぐるみを踊らせたり、歌わせたりするサービスなどが生まれるのでは。技術の進歩が飛躍的なので、それらを使った遊びがはやりそう」と話す。
平成女子
世代超えた消費に期待
90年代後半から00年代初頭に流行したキャラクターや雑貨などの小学生カルチャーを指す「平成女児」。これに親しんだミレニアル世代のノスタルジー消費と、新鮮さを楽しむZ世代の消費が重なり、大きなブームとなった。商業施設でも平成女児をテーマにした期間限定店が開かれた。
代表的なのがナルミヤ・インターナショナルの「ナルミヤキャラクターズ」。25年はライセンシーが100社を超え、ロイヤルティーベースでの売り上げは25年2月期で前期の7倍になった。新宿・ルミネエストに初の旗艦店も開設した。

若者のトレンドを分析するシブヤ109ラボ所長の長田麻衣さんは、「26年は平成コンテンツがさらに若年化するのでは」と予測して、小学校低学年向けのコンテンツから派生したトレンドに注目する。ナルミヤの新規事業開発部次長の漆畑祐樹さんも「世代を超えて楽しむ消費に進化する」とみて、リアル体験の強化やIP(知的財産)拡大で客層を広げる。
ミャクミャク
老若男女から愛されるキャラ 次は「トゥンクトゥンク」?
大阪・関西万博の公式キャラクターとして人気を集めた「ミャクミャク」。発表された当初は個性的な見た目からマイナスな受け止めも多かったが、今では老若男女から愛されるキャラクターとなった。
会場外では、あべのハルカス近鉄本店や大丸大阪・梅田店、高島屋大阪店などに公式ストアを開設。ミャクミャクのキーホルダーやぬいぐるみ、箱に絵柄があしらわれた菓子類などを購入する人で連日にぎわいを見せた。
大丸梅田店5階の公式ストアは、万博閉幕後の11月1日に売り場を倍以上に拡大、初日は開店前に約1000人が並んだ。同店によると、ミャクミャクのキーホルダーやマスコットは開幕当初から反応が良かったが、人気キャラクターとの協業でより熱量が高まったと分析している。

次の国際博覧会のキャラクターとして、27年に横浜で開催する国際園芸博覧会の公式キャラクター「トゥンクトゥンク」が注目され始めている。ミャクミャクに続き、ブームになるかが見どころだ。
リカバリーウェア
市場、販路広まり競合激化で淘汰も
「リカバリーウェア」市場が盛り上がっている。それほど日ごろの疲労感に悩まされる人たちが多いのだろう。
一昨年から著名人を起用したテレビCMなど、大々的な広告を発信するブランドも増え、世の中での認知が一気に拡大した。商品は上下セットで4000円以下から3万円台まで価格帯も広がり、販路も広がった。

このため昨年は、効果に期待した〝お試し購入〟層が市場の急拡大を支えたとみられる。今年も低価格帯のブランドを中心にお試し購入層がより増えるだろう。市場はさらに拡大が見込まれる一方、ブランド間の競争は激しくなり、淘汰(とうた)も進むはずだ。
