傘メーカーのサエラ(東京)が、再生可能なプラスチック傘の普及に力を入れている。スタイリッシュなプラスチック傘「+TIC」(プラスチック)の安価版「プラスチックライト」を開発し、今春からセブンイレブンで販売をスタート。子供向けのワークショップも開くなど、傘を通した「消費の構造改革」に挑んでいる。
(佐々木遥)
念願のコンビニで販売
コンビニエンスストアでの販売は、山本健社長の念願だった。17年にプラスチックを立ち上げた当初から「傘の消費を変えるための仕組み」を思い描き、「最終的に循環させるには、広域な販売拠点が不可欠」と考えていた。多角的な販売先の一つとして、コンビニエンスストアにアプローチをかけていたという。
「ビニール傘の使い捨てを減らしたい」と開発したプラスチックは3500円。幅広く流通させるにはハードルが高いことは分かっていたが、「コンセプトをしっかり打ち出す必要があった」。プロダクトデザイナーの柴田文江氏、ブランディングデザイナーの西澤明洋氏と協業したデザイン性の高い上質なプラスチック傘で、骨や中棒にも一切金属を使わず、全てプラスチックにすることで再生可能とした。デザインコンシャスな層や環境意識の高い人からの評価は高いものの、マスに広げるのは難しい。
そこで新たに立ち上げたのがプラスチックライトだ。同社の持つ生産背景を生かして1000円という価格を実現。「さびない、つよい。長くつかえる傘」をコンセプトに、プラスチックと同じく環境に優しく、壊れにくい「サステイナブル(持続可能)な傘」を作った。多彩なラインナップのプラスチックに対して色柄は1種類と限られるものの、高いデザイン性で昨年、グットデザイン賞を受賞。セブンイレブンでの販売が決まったのは、SDGs(持続可能な開発目標)の普及など「時代の後押しもある」と感じている。
思いやりの心を育てる
今までの活動の集大成として、このほど、子供向けの組み立て傘「そら傘キット」を作った。傘の使い捨て問題や消費行動を突き詰めて考えると、「人間が根に持っている感情の問題に行き着いた」と山本社長。
お気に入りの傘を自ら組み立てることで、「未来を担う子供たちに、物に愛着を持って大切に扱う気持ちを導き、思いやりの心を育んでほしい」という。自分で組み立てる体験から生まれる喜びを実感してもらい、「その喜びを伴う消費行為が社会に影響を与えることに気づいてもらうきっかけになれば」と話す。
そら傘キットは今秋、サエラのオンラインストアで販売を始める。かわいいイラストを載せたパッケージは、石灰石を主原料とする紙「ライメックス」を使う。2000円。
22、23日には、東京・天王洲アイルで開かれる子供向けイベント「ヴィレッジ天王州」で、傘作りのワークショップとトークショーを開く。トークショーには山本社長のほか、柴田氏や東京都市大学環境学部教授で総合研究所環境影響評価手法研究センター長の伊坪徳宏氏らが登壇する。