クラス神戸(神戸市)の奥谷佐和子代表は専業主婦から起業、ハンドメイド作家の育成支援を広げている。作家として自立できるよう教育プログラムも揃え、百貨店での期間限定店は安定して売り上げるようになっている。自らも作家である奥谷代表は、「趣味や手芸ではなく、優れた作家がいることを知ってもらい、安かろう悪かろうというハンドメイドのイメージを一新したい」との思いがある。
(古川富雄)
私が集めれば
奥谷代表は神戸のアパレルメーカーに勤務していたが、結婚を機に専業主婦となった。家でもできる仕事があると気付き、「スワロフスキー」のデコレーションを09年に始めた。当時はデコ電として人気があり、その後教室も開いた。さまざまな作家とのつながりもでき、「売る場所がない、百貨店にはつてがない」といった声を聞くようになった。「それなら、私が作家を集めてイベントを開けばいい」と思った。
19年11月、初のイベント「クラス神戸」を神戸の歴史的建造物で開いた。「良い場所で開けば神戸を知ってもらう機会にもなる」と発想した。1日で約350人が来場する盛況となった。
当初から登録制としており、現在は約70人がメンバーとなっている。元々専業主婦だった人が多い。入会条件は、製品の良さだけでなく、客のことを思っているか、長く使えるか、物作りに対して真摯(しんし)な気持ちを持っていることなど。あくまで個人事業として生産から販売まで自ら取り組むことも条件とする。「私を含め作家は『どうせ趣味でしょ』と言われて悔しい思いを経験している」ことが背景にある。
作家としてデビュー、成長できるような教育プログラムも揃えている。「イベント出店準備講座」は値札の付け方、説明書の付け方、搬入搬出の方法などを事細かに動画で紹介する。写真の基礎から学ぶスタイリング講座、百貨店での接客術などもある。
定期的なイベントは神戸・旧居留地、東京でのクラス神戸がある。登録作家はここに出るのが最初の目標となる。評判が上がり売れ行きの良い作家は、西宮阪急、大丸神戸店で開くクラス神戸プレミアムに出られる。メンバーは10人ほど。1週間で300万円の予算で臨むため、作家1人当たり40万円分の在庫を積むことを条件としている。昨年6月西宮阪急では450万円を売る実績を作った。今年6月19~25日の西宮阪急でも初日売り上げは50万円に達した。
さらに販路拡大
来年は作家たちの販路を広げるため、アパレルメーカーとの取り組みを始める。多くの作家は育児、家事、介護などを抱えているため、イベントを増やすことは難しいからだ。自力でアパレルメーカーや百貨店と取引できる作家を出すことも目標とする。
自らの将来については、作家、イベント主催者として積み上げてきたノウハウを別の場所でも生かしたいと考えている。製品プロダクト、売り場改善など企業に提案したいことが多くある。そのために「自らを鍛え続け、大きな舞台でも活躍する」思いを持っている。