ヘリテッジ(東京、久保順也代表)は、革製品のDtoC(メーカー直販)ブランド「クラフスト」を今夏からスタートする。コンセプトは「フューチャービンテージ」。長年使い続けることで輝きを増す物作りを目指す。7月下旬にECサイトを公開、8月に1店目となるショップインファクトリー(東京都台東区)、年内に2店目を都内にオープンする。21年1月からは海外向け販売(越境EC)も予定する。
(大竹清臣)
同ブランドは、欧州ラグジュアリーブランドの修理経験の豊富な職人、太田玲氏が製品を企画開発し、堅牢で修理しやすく、使うほどになじんでいくレザーグッズを提供する。「良いものを長く使い続けていく価値観を世の中に伝えていきたい」としている。
直すことの難しさ
ブランドのポリシーとして、作るより、直すことの難しさを知っている、革の修理職人が作る財布とかばん。メーカー以上に、革製品の構造や縫製技術を知り尽くしているからこそ作ることができる。例えば、使い続ければ必ず傷んでくる箇所があるのを分かっていれば、事前に補強したり、作る段階から壊れた時に修理しやすい構造にしたりすることも可能だ。革の品質はもちろん、目には見えない細部にもこだわりを尽くし、持つ人の生き方に寄り添いながら長くつきあえる製品を目指した。
「慣らしながら、直しながら」。生涯使い続けられる上質かつ堅牢な製品を提供。使うほどに、手になじむ。体の一部になってくる革(コードバン、ブライドルレザー、イタリアンレザー)を使用している。それでも傷んだ時には工房で修理できるので、生涯のパートナーとして、使い続けてもらえる。価格帯は、長財布2万7000~7万円、名刺入れなどで7800~2万円。
物への愛着深める
クラフストでは、10年後も使い続けられるよう、①厳選素材②職人の技術③飽きないデザインという三つの取り組みで「経年美化によって、物に対する愛着を深めることができる世界」を実現する。
さらに「永年無償修理体制」を設け、物としての価値を顧客と共に育てていく。無償修理の内容は①縫製箇所のほつれ直し②のり剥(は)がれ部張り直し③ファスナー引き手取り付け④金具打ち直し⑤ホック交換⑥コバ塗り直し(10センチ以内)⑦キーケース金具交換(金具パーツ代は有償)⑧ジッププル作製交換ほかとなる。
金融機関で働いた後、老舗のレザーブランド取締役の経験もある久保代表は、独立してからスタートアップを中心に経営支援をしてきた。今回立ち上げたクラフストでは「金融と製造業での経験を生かし、受け継がれてきた伝統的な技術を守り低迷する産業に雇用と希望を生み出したい」と強調する。