トレンドにジーンズが浮上し、ビンテージに着想したコアなアメカジブランドも人気を集めている。国産ジーンズを買い求めるインバウンド客も増える一方だ。一方、産地ではセルビッジデニム用の旧式織機がフル稼働しても、供給が間に合わないなどの課題が出てきた。業界は次の一手をどう打つべきか。デニムプロデューサーでドクターデニムホンザワ社長の本澤裕治氏に聞いた。
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国内に伸び代なく
ここ数年、レディスのトレンド感のある2万~3万円のジーンズは売れています。ビンテージレプリカを得意とするブランドも伸びている。ただ、低価格帯の市場では3000円ほどで品質・デザイン共に申し分ない大手SPA(製造小売業)のジーンズが席巻し、難しさを感じている事業者も多いでしょう。
国内市場は人口減や経済状況の厳しさで伸び代がなくなってきている。もっと海外に目を向けるべきです。今後、産地企業はグローバル化しなければ生き残れなくなるでしょう。世界を舞台に活躍する企業になれば、売り上げや利益が伸びるだけでなく、働きたいと思ってくれる若い人材も集まってくるはずです。
今年から、アムステルダムなどで開かれている合同展示会「キングピンズショー」で国産デニムを紹介する支援活動を始めました。現地バイヤーからの注目度は高く、可能性を感じます。
固定観念を排して
また、国内産地では旧式の織機が不足している一方、ダブル幅の織機には余裕があります。一般的なデニムを作っても海外に価格の安さで負けてしまいますが、和柄を織りで表現したデニムなど、日本ならではの生地を企画すれば、独自性で戦えると考えています。既にとある企業と組んで開発を進めています。
もちろん、国内市場も軽視してはいけません。デニムを使ったこれまでにない商品企画や新たな販路の開拓を進めるべきです。例えば、通常はシャツに使われる8オンスほどの薄手の生地で仕立てたジーンズなど。この気候ですから、ジーンズ=重いという固定観念は捨てた方がいい。デニムを使ったクッションカバーやインテリアファブリックなども良いと思います。
ドクターデニムホンザワとしては、逆に海外の工場を使った物作りも模索し始めました。実は海外にも旧式の織機を持っている工場が多くあるんです。今はインドの企業と組んで、私がディレクションしたビンテージテイストのデニムを開発中です。国産デニムに多い40~70年代の生地に着想した物ではなく、30年代頃の生地をベースにして差別化する考えです。