米化学メーカーのイーストマンケミカルが製造するジアセテート繊維「ナイア」が、サステイナブル(持続可能)な素材として存在感を高めている。高度なリサイクル技術で循環型のサプライチェーンを確立し、グローバルSPA(製造小売業)からラグジュアリーブランドまで採用を拡大。今年から、日本でも本格的にブランディングを始めた。
ナイアは、木材パルプが主原料の半合成繊維。木材パルプは、FSC(森林管理協議会)、もしくはPEFC(森林認証)を取得している適切に管理された森林と植林地から調達している。3社あるパルプサプライヤーと工場の場所もウェブサイトで公開している。製造工程でも、安全で環境に配慮した化学物質の使用、二酸化炭素排出量や水使用量の低減、生分解性などが第三者機関で立証されている。
昨秋新たに開発した「ナイア・リニュー」は、これにプラスチックリサイクルを組み合わせ、資源の循環性を向上させた。半合成繊維は木材パルプに酢酸を化学的に結合させて作るが、その酢酸の原料となる分子ブロックを、独自のカーボン再生技術で廃棄プラスチックから生成した。品質は従来品と同等。25年までに全体の50%、30年までに90%をナイア・リニューに置き換える計画だ。
同社がレディスファッション市場に乗り出したのは19年で、それまでは産業資材用途がほとんどだった。長繊維はシルクのような滑らかな手触りや優美な光沢とドレープでオンタイムのファッションウェアに、短繊維は柔らかい風合いと速乾や抗ピリング性といった機能でTシャツや部屋着などカジュアル衣料に推す。「持続可能なファッションを全ての人が利用できるようにする」(ルース・ファレルグローバルマーケティングディレクター)ビジョンの下、様々な企業と取り組み、販売量は2ケタ増のペースで拡大。一時は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたが、今年は中国を中心に好スタートを切った。需要拡大を見据え、今春にはスペインの工場を買収し、増設している。
現在、日本での販売量は年1000トン以上。「ビジネス拡大の可能性は大きい」とし、中長期に数倍を目指す。テキスタイル産地企業の「高品質で革新的な開発」への期待も強く、販売先への技術やマーケティングのサポートを積極的に行う考えだ。