《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「リツコカリタ」 人や物との出会いや交流の場

2024/06/28 11:30 更新


エスの店内。テーブルは70センチと90センチの高さにツーウェーで組み立てられる

 今年でデザイナー活動10年となる苅田梨都子さん。服飾専門学校在学中に、レディスウェア「梨凛花~rinrinka~」を立ち上げ、現在は「リツコカリタ」で活動しています。個人のお客様への受注販売と自社ECを主体に、卸売りも行っています。3月には、内装・インテリアデザイナーの佐藤裕樹さんとの共同運営で、東京・四谷三丁目の住宅街に、事務所兼店舗「S(  )」(エス)をオープンしました。

色々な人と一緒に

 「いつかお店を持つのが夢だった」という苅田さん。以前は町田市のアトリエ兼住居で、アポイント制の受注会も行いましたが、都心に近く、仕事帰りにも立ち寄れる場所が良いのではと思いました。エスはオープンデーに来店が可能です。「物を介してコミュニケーションをとる感じが好き」という苅田さんは、日常の延長線上で、服選びも悩んだりしながら、ゆっくり過ごせる場所にしたいと考えています。ブランドオリジナルの香水や、苅田さんの地元のお茶なども揃え、来店した方にはお茶とお菓子を振る舞います。

デザイナーの苅田梨都子さんは、映画、美術館にまつわるコラムも執筆しています。好きな監督はエリック・ロメール

 内装は佐藤さんが手掛けました。誰かの家に遊びに来たようなリラックスできる空間を意識しつつ、長く白い大きなカーテンを設置したり、床に大きな板を貼ったりして特別感のある雰囲気です。月に1度外部の方を招くイベントは佐藤さんと一緒に企画します。これまでに、かばん、服飾雑貨、ジュエリー、インテリアのブランドとの展示販売を実施しました。苅田さんはブランド事業は1人で行っていますが、「誰かと一緒にやることの良さを痛感しています。単純に楽しい」そう。性別や業種が異なる佐藤さんは、視点が違って、苅田さんにはない意見を言ってくれ、補い合うことができています。

6月26日までジュエリーブランド「MIKU FUKAMITSU」のポップアップストアを開催

客層の幅が広がる

 イベント期間中も、リツコカリタの商品を展示販売します。以前は女性客だけでしたが、エスには、性別や年齢を問わず来店するので、見てもらう人の幅が広がりました。目指していたように、協業ブランドと自社の双方のお客様にとって、人や物との新たな出会いや交流の場になっています。それぞれに、飽きさせない見せ方ができているメリットもあります。

イベント期間中もリツコカリタの商品は展示販売。様々な人に知っていただく機会になっています

 また、リツコカリタを着ている顧客と会話する機会が増えました。一人ひとりの素敵な長所を見つけるのが得意で、似合う着こなしを提案することに喜びを感じている苅田さんですが、「自分の理想像を持ちながら、実際にお客さんに接することは、今後のデザインや作るアイテムにも反映できることがありそう」と言います。エスを起点に広がりと変化が生まれています。

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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