【ファッションとサステイナビリティー】帝人フロンティア リサイクルポリエステル繊維「エコペット」 発売から25年 技術力磨きさらに成長

2020/06/27 06:30 更新


 環境に配慮した素材で作ったアパレル製品を店頭で見かけることがこの1、2年で普通になってきた。新型コロナウイルスが世界を襲い、今後消費者意識がどう変化するか、予想するのは困難だ。「ますますサステイナビリティー(持続可能性)、エコロジーが重視される」という見方がある一方、「低価格ニーズがさらに強まる」との見解もある。

新品と変わらない品質

 一時的には環境に配慮した製品は勢いを失うかもしれない。しかし大きく後退することはないだろう。グレタ・トゥンベリさんのような若い人たちが発信力を持ち、今後購買の中心層になっていく。学校などで地球環境を守ることの大切さを学び、育ってきた世代だ。しかし「環境に優しいから高い」は通用しない。技術革新や生産量の拡大で製造コストをできるだけ抑え、環境負荷が少ない製品でありながら従来品とほぼ同価格で提供することが必要だ。

 衣料品向けの環境配慮型素材で主力の一つになるのがリサイクルポリエステル繊維。帝人フロンティアの日光信二社長は、回収した使用済みペットボトルをマテリアルリサイクルする「エコペット」で「バージンポリエステルと変わらない品質の糸、生地を作る世界最高峰の技術を持つ」と胸を張る。帝人グループがエコペットの販売を始めたのが95年。それから25年間、技術力を磨き、「ピラミッドの頂点の高難度、高価格帯からコストを抑えたボリュームゾーンまでどんなニーズにも対応できるようになってきた」。25年間で生産したエコペットは累計で50万トン。ペットボトルに換算すると250億本、Tシャツでは20億枚に相当する。

 「最初は少しゴワゴワ感があった」と日光社長は当時を振り返る。衣料、インテリア、寝具、フィルター、建材資材、自動車内装材など用途を大きく広げてきた。以前は短繊維のみだったが数年前に長繊維を開発し、糸、生地のバリエーションが一気に広がった。吸汗・速乾性や防透け、やわらかな手触り、軽さなどを実現する機能性ポリエステルや異形断面糸、中空糸、マイクロファイバーなどの極細繊維もエコペットで実現し、大きな成長を狙う。

四つ山扁平状の断面形状や中空糸など様々な糸を「エコペット」で実現し、用途を広げている

消費者と一緒になって

 難しいのは、良いものを作れば売れる時代ではないことだ。消費者にどう知ってもらうかが重要になる。「詳細はまだ言えないが25周年を機に、エコペットをリブランディングする。コンセプト、ロゴも含め新しく生まれ変わる」と日光社長。一つはエコペットブランドの統一。これまでペットボトルをマテリアルリサイクルする「エコペット」とケミカルリサイクル「エコペットプラス」を分けていたが、「作り手発想で消費者から見れば同じ」とエコペットに統一することにした。ケミカルリサイクルも強化し、組む原料メーカーを増やすなど新たな取り組みが始まりそうだ。

 消費者にエコペットや環境に配慮した活動を知ってもらう、身近に感じてもらうことを大切にしている。10年前から音楽イベント「エイ・ネーション」でペットボトルのリサイクル活動をサポートし、FC東京やガンバ大阪とペットボトルのリサイクル活動に取り組むなど多彩だ。福岡県で開かれる野外音楽フェス「宗像フェス」では、実行員会が運営する「宗像フェスecoプロジェクト」に協力。フェス会場内での資源ごみの回収や海岸清掃などを支援する。

 キーワードは「見える化」だ。イベントでペットボトル回収に協力してくれた人にエコペットを使ったミサンガやエコバッグなどを配っている。「コンセプトだけだと伝わりにくい。回収したペットボトルがどう再利用されたかをモノで紹介すると参加意識が一気に高まる」と担当者。小学校などに出向きリサイクルを切り口にした特別授業も行う。作って売るだけでなく、こうした草の根的な活動が共感の輪を広げる。日本だけでなく、これからは世界が舞台。できることから始め、発信することが世界ブランドへの一手となる。

「宗像フェスecoプロジェクト」では海岸清掃を支援するなど消費者との接点を重視する

■帝人グループ「エコペット」25年の歩み

95年 ペットボトルリサイクルポリエステル繊維「エコペット」販売開始

96年 台所用水切り袋に採用

99年 産業資材用高強力長繊維に採用

00年 ケミカルリサイクルを用いた「エコペットプラス」販売開始

02年 使用済みポリエステル繊維から新たなポリエステル繊維にリサイクルする「エコサークル」(繊維to繊維)開始

03年 幟(のぼり)、垂れ幕、企業女子制服に「エコペットプラス」の採用始まる

04年 「新原料リサイクル技術」が「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」受賞

省庁の制服のネクタイや作業衣(ユニフォーム)に「エコペットプラス」採用

05年 繊研合繊賞グランプリ受賞

愛知万博の警備隊、儀礼隊、清掃員、医療スタッフの制服に「エコペットプラス」採用

06年 「エコペットプラス」使用の公式ウェアをサッカーの日本高校選抜チームに提供

「エコペットプラス」使用したTシャツを日本車椅子バスケットボール選手権大会に提供

「FIFAクラブワールドカップ ジャパン2006」で飲料用プラスチックカップをリサイクル

07年 「エコペットプラス」使いの高性能防水透湿素材「エコストーム」の本格展開

リクルートスーツに「エコペットプラス」採用

大型音楽イベントでPET容器(プラカップやペットボトル)のリサイクル活動実施

食品販売店のブルゾンユニフォームに「エコペットプラス」採用

08年 愛媛県のプロスポーツチーム応援ユニフォームに「エコペットプラス」使いの機能性ポロシャツ採用

「第21回東京国際映画祭」に「エコペットプラス」を使用したグリーンカーペットが登場

タイヤコード用途で、世界で初めて「エコペット」採用

高速道路料金収受員制服、カラオケ店員制服、インナーアパレルの販売員制服、スポーツ衣料などに「エコペットプラス」採用

09年 スワニーアメリカコープ社が「エコストーム」を使用したスキー手袋を開発

10年 北九州市役所、防寒着に「エコペットプラス」、

化粧品販売員制服に「エコペットプラス」採用

音楽イベント「a-nation」会場でペットボトルのリサイクル活動のサポート開始

11年 飛行機内ブランケット、メディカル白衣に「エコペットプラス」採用

12年 甲子園球場でのプラスチックカップの回収・リサイクルの取り組み開始

防災用毛布に「エコペットプラス」採用

15年 中国で「エコペットプラス」生産開始

17年 「エコペット」のグローバル生産体制を構築

タイ国内における環境教育の促進のため、タイの一貫教育機関の小学部(ACP)とペットボトルのリサイクル活動を展開

ガンバ大阪、FC東京とリサイクル活動を開始

18年 「プラスチック海洋ごみ問題の解決に向けた宣言」発信

20年 「エコペット」ブランドを拡大し、「エコペットプラス」も含めて全て「エコペット」ブランドに

(繊研新聞本紙20年6月25日付)

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