フレックスジャパン 透明マスクを半年かけて開発 聴覚障害者に思いを寄せて

2021/01/18 06:27 更新


 シャツメーカーのフレックスジャパン(長野県千曲市)は、プラスチック製の透明マスクを開発した。聴覚障害者がマスクを着用しても口元の動きを解読して、これまでと同じように意思疎通がとれるもの。開発期間に半年以上を費やした。「本業とは全く異なる〝畑違い〟だが、コロナ禍で何か社会貢献できることはないか」と模索するなかで生まれた。

(藤川友樹)

「ほっとけない」

 きっかけは、矢島隆生社長がたまたま目にした地元テレビ局のニュース。聴覚に障害のある男性がクリーニング店で働き、簡単な接客もしていたが、新型コロナウイルスの影響で客がマスクをしているため、口元の動きがわからず、会話が成立しなくなってしまったという内容だった。シャツとクリーニング店は密接な関係にある。地元で困っている人がいるのにほっとけない。矢島社長は翌日「口が見えるマスク(透明マスク)を開発ができないか」という号令を社内に出した。

 矢島社長と開発マーケティング部の担当者は、クリーニング店で取材を受けた男性を訪問、詳しい事情を聞いた。その男性は、社会福祉法人長野県聴覚障害者協会理事長の井出和成さん(73)だった。縁ができたことで、ほかの聴覚障害者や手話通訳者などにもヒアリングして、透明マスクを作ることにした。

ろう学校に贈呈

 試作品を実際に使ってもらいながら、改良を重ねた。最初は①自分の息でマスクの内側が曇ってしまう②蛍光灯の光で反射してしまう③夏場は長時間着用すると暑苦しい――という問題点が出た。特に反射を防ぐことは、フェイスシールドでも満足できるものは少なく、手話通訳者からの要望が強かったという。そこで、マスク内側には曇り止め加工、光で反射する部分には反射防止加工を施すなどで対応した。

 こうして製品化した透明マスクを、長野県の長野ろう学校に40個、松本ろう学校に28個贈呈した。長野県聴覚障害者協会を通じて、1個1500円で販売もしている。サイズは2サイズ。

 松本ろう学校の教頭は「ハンデのある生徒を応援してくれる人・企業がいること」を朝礼で生徒たちに紹介。長野ろう学校は「障害のない方も、障害のある方にちょっと気づかいをしていただけると、お互い生きやすくなる。思いを寄せていただきとても感謝している」とコメントした。

透明マスクを贈呈して着用方法を説明。生徒が手に取っているのが透明マスク


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