福岡ファッションビル(FFB)を運営するエフ・エフ・ビー(福岡市、本田義博社長)は今月、福岡の若手4ブランドを集めてファッションショーを開いた。
今年で3回目となり、ショーの開催は今回で最後となる。今後はこれまでに参加したブランドを含めた、地元ブランドのビジネスの支援を引き続き行う。
(関麻生衣)
◆卸センターの新機能
同ビルはミセスアパレルの卸センターとして約40年の歴史を持つ。もともと、「福岡でミセスブランドと言えばFFBと全国での認知はあった」が、アパレル業界が低迷する中、新しいビルの機能を模索していた。博多駅からすぐの立地を活用し、オフィスとしての需要もあったが、ファッションの軸を維持したいと考えた。
そこで、地元の若手デザイナーの支援に着目し、FFBと福岡の街やファッションの活性化を狙った。この事業を「Revo×Laboフクオカ」プロジェクトと名付け、その一環としてファッションショーを企画した。
1回目の開催となった17年は募集しても反応が薄く、主催側が参加ブランドを探し回ったという。しかし、参加者やセレクトショップ「ウォール」(アッシュ・ぺー・フランス)によるSNSの発信が効果を発揮し、2回目となる昨年は応募数が増えた。将来のビジネスチャンスにつなげようと、地元の若手デザイナーが参加を目指すようになった。
来場者も回を重ねるごとに増加。初年は約300人、昨年と今年が約550人。バイヤーや業界関係者、ウォールの顧客、専門学生などが訪れ、地元の若いクリエイターの交流の場にもなっている。
◆若手の登竜門に
当初は、ビルと街の活性化のために始めたショーだったが、今では若手がブランドをビジネスとして福岡から全国に広げるためのハブとして機能している。参加動機を聞くと「好きで作るだけのブランドではなく、ビジネスにしていきたい」「プロの第一歩としてデビューの場にしたい」との声が多く挙がった。「プロの舞台演出家が手掛ける本格的なステージで服を見てもらえる。地方でこの規模のショーはあまりない。参加できて光栄」と話したデザイナーもいた。
若手の育成をさらに強化するため、今年は新たに、当日会場に設置したエキシビションスペースで物販も実施。バイヤーとの商談も可能にした。昨年に引き続き、福岡パルコ本館のウォールで参加ブランドの期間限定店も開く。3月16日から31日まで。
本田社長は3回のショーを振り返り、「若いデザイナーとのコミュニティーができた。福岡は観光とファッションに力を入れており、その一翼を担えていると感じる。今後も地元の新興ブランドの成長を支えていきたい。若い感性を伸ばしながら、お互いにプラスになる活動を増やしていけたら」と話した。
◆若手が実力を試す場に
今回参加したのは、前回に引き続き2回目の「ヒノミホ」、新規の「ゲンコツクリエイト」「ユニーク、ニュウ、オリジナル、」「スピロスキン」。テーラード×ストリートのスタイリング、スポーティーなアイテムなど、トレンドを強く感じさせるショーとなった。
ゲンコツクリエイトは、同ショー初のメンズブランド。テーラー出身のクリエイターが作る。クラシカルなツーピース、スリーピーススーツを軸に、ボンタンのようなパンツや柄シャツを差しこんで、〝ちんぴら〟風のイメージだ。蛍光色のサイクルパンツやパーカも見せた。
ヒノミホは、草木や花といった自然から着想したモチーフや、水滴を垂らしたようなドット柄のプリント生地でドレスやスカートを作った。今回は古着のリメイクもあり、スポーツブラやパーカなどスポーツの要素を取り込んだ。
「女の子が初めてリップをしたときのような高揚を感じてほしい」というのはユニーク、ニュウ、オリジナル、。「白昼夢」をテーマに、アウトドアシーンを連想するようなカジュアルなスタイルを見せた。ナイロンベルトで腰をきゅっと締め、裾をドローストリングで絞ったスカートやアノラック、シャツドレスにサファリ帽を合わせる。ドリームキャッチャーをアクセントにボヘミアンな雰囲気も漂う。
モノトーンをベースにしたスピロスキンは、「オービタルピリオド」(惑星の公転周期)をテーマにした。ジャージーを使った、すとんとしたIラインやAラインのドレス、ジップアップジャケットなどを作った。ちょこんと先のとがった帽子は異星人から着想したという。シーズンテーマは設けていないが、デザインソースを宇宙にして、デザインに一貫性を持たせている。