アートとシネマがランデブー(その2)(宇佐美浩子)

2019/11/22 06:00 更新


「アートとシネマがランデブー」をテーマに、前後2回のシリーズ編で展開する11月の「CINEMATIC JOURNEY」。

その後半となる今回は「東京2020」に向け、街並みの変化が絶え間なく続く東京がキーワード。

≫≫宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから

まずは東京都名誉都民でもある、あの世界的アーティストのドキュメンタリー映画『草間彌生∞INFINITY』の話題から。

Artist Yayoi Kusama drawing in KUSAMA - INFINITY. © Tokyo Lee Productions, Inc. Courtesy of Magnolia Pictures.

草間彌生と言えば、水玉とネット・ペインティングをすぐさまイメージする方も多いと思う。

だがその豊かな才能は絵画、彫刻、インスタレーション、パフォーマンス・アート、さらには文学、映画、ファッションなどなど、実に幅広い分野で探求を重ね、多くの作品を発表していることをご存じですか?

とはいえ70年以上にわたる芸術活動の道のりは平坦とは言い難く、とりわけ1957年に単身渡米し、15年程のニューヨーク時代は、さまざまな壁に直面してもなおチャレンジをし続け、より一層タフな女性へと進化をし続けた様子が、スクリーンを通じシェアすることになる。

そうした紆余曲折の繰り返しの中で誕生する作品への熱き思いは、90歳になった今も留まることを知らず、本人のインタビューや関係者からの証言、また次々とスクリーンに映し出される貴重な映像などから伺い知れる。

Yayoi Kusama, Infinity Mirrored Room-Love Forever, 1966/1994. Installation view, YAYOI KUSAMA, Le Consortium, Dijon, France, 2000. Image © Yayoi Kusama. Courtesy of David Zwirner, NewYork; Ota Fine Arts, Tokyo/Singapore/Shanghai; Victoria Miro, London; YAYOI KUSAMA Inc.

本作の製作過程で、日本人と結婚したという監督・脚本・プロデューサーを兼務するヘザー・レンズ。

美術を専攻した学生時代に一目ぼれした草間彌生の作品との出会いが、やがて10年以上にわたるドリーム・プロジェクトとなった本作の製作をすることになろうとは、本人も想像しなかったのでは?!

その一方で、だからこそどんな出会いにも未来への鍵が潜んでいるようにも思う。

そんな彼女のコメントにもある通り、

❝草間さんの粘り強さや頑固さに触発されてほしい❞(本作資料より)

その言葉の真髄を自身を含め多くの観客と共有したく!

"Peter Moore, Photo of Yayoi Kusama with ""My Flower Bed"" in her NYC studio, c.1965 © 2018 Barbara Moore / Licensed by VAGA at Artists Rights Society (ARS), NY, Courtesy Paula Cooper Gallery, New York."

『草間彌生∞INFINITY』

11月22日(金)よりWHITE CINE QUINTOほか全国ロードショー

配給 : パルコ


@WHITE CINE QUINTO劇場内(©h_usami)

さてここで少しばかり寄り道を!

実は本作の上映劇場である「WHITE CINE QUINTO(ホワイト シネクイント)」は、11月22日に新装オープンの渋谷パルコ8階に、来場すること自体がイベントとなるミニシアターとして誕生!

そのデビューを飾るのが本作というワケ。

ちなみに劇場名の「WHITE」には「無限に広がる無垢な場所」という意味が込められているとか。


一方、日本橋三越本店の本館5階で今月26日まで開催中のイベント「江戸東京キラリプロジェクト」も、新たな視点で東京の街と向き合うチャンスと言えそう。

東京人という背景を持つ自身でありながら、なんとも驚くことに創業1世紀以上の老舗が3000以上もあるということを、このイベントを通じて知り得たから。

衣食住あらゆる分野に及ぶそれらの背景には、さまざまな感動すべきストーリーと、時代と共に育まれる新たな技の魅力の融合が、江戸文化の未来へと紡がれていくと信じて!

草間彌生美術館展覧会「集合の魂たち」より(©h_usami)

では再び、今回のテーマ「アートとシネマがランデブー」のキーワード「東京」のヒロインこと、東京都名誉都民かつ、新宿区名誉区民でもある草間彌生。氏の本拠地となる「草間彌生美術館」@新宿区の近況を。

既に幾度となく当コラムでもご紹介してきたように、入館チケットは日時指定の予約・定員制(各回90分)で美術館webサイトのみにて販売しているのだが、「入館者の顔ぶれは実にグローバル!」という感動の一コマを、しばしば近所を通りがかる度に目にしては、嬉しくなる。

つまりココは、草間ファンの聖地なのだから。

というわけで現在開催中の展覧会「集合の魂たち」(~来年1月31日まで)情報を簡単に!

前述の映画に登場する時代背景とも重なる本展は、同一物を反復する「集積」或いは「集合」と題する1961年にスタートしたシリーズで、現在に至るまで多種多様な作品が制作されているとのこと。

とりわけソフト・スカルプチュアのシリーズは、その強烈なインパクトも伴い記憶に残ることが多く、中でも布に綿を詰めた柔らかな突起物を家具などに張り付けたシリーズは、その最たるものではないかと思っている。

是非ともこの機会に、草間彌生ワールドをアートとシネマのペアリングを楽しんでみては?

草間彌生美術館展覧会「集合の魂たち」より(©h_usami)

「アートとシネマがランデブー」をテーマに設け、「東京」をキーワードに展開した11月後半の「CINEMATIC JOURNEY」。

そのフィナーレは世界30都市を網羅している『ルイ・ヴィトン シティ・ガイド』の中から、もちろん「東京」の最新版をピックアップ!


なぜなら今回のヒロインでもある草間彌生とのコラボレーションもかつて実現したというご縁

かつまたこのほどアップデートされた最新版では、「東京2020」のヒーロー的存在でもある建築家、隈研吾がスペシャルゲストとして迎えられ、都市に対する独自の視点やお気に入りのスポットをシェアしてくれるのも魅力の一つ。

こだわりのセレクションによる最新アドレスなどが掲載されている中、東京人の私としても興味深く思ったのが、さまざまな数字的データや「東京」にまつわるシネマや音楽、文学作品などを集めた数ページ。思いの外「知っているようで知らない」のが、実は真の東京人なのかもしれないと実感。

本書を手に、「CINEMATIC JOURNEY」東京編に出かけてみたく‼

『ルイ・ヴィトン シティ・ガイド 東京』ケース付き(©h_usami)


宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから

うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



この記事に関連する記事