Nuovo Cinema Paradiso!
なんとなく気分をあげてくれる響きに、自然と笑顔がこぼれるイタリア語。そしてどことなく聞き覚えのあるこの言葉に、ピンときた方は?
おそらくイタリア映画通でなくてもご存じの方が多いと思われるのですが、答えは…
ジュゼッペ・トルナトーレ監督&脚本による不朽の名画『ニュー・シネマ・パラダイス』その原題です。
1988年に本国で公開され、翌年の12月、東京・銀座にある世界各国の良質な作品を厳選し上映するミニシアター「シネスイッチ銀座」にて、連続40週、観客動員数約27万人!未だかつて破られたことのない「単一映画館における興行成績第一位を樹立した」とのこと。
そんな気分をシェアしたく「オウチでシネマパラダイス?!」とネーミングした4月の「CINEMATIC JOURNEY」。「その3」となる今週は、奇しくも大林版「ニュー・シネマ・パラダイス」とも称され、ファン待望の新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の公開予定日※であった4月10日、本作の監督であり、日本を代表する映画作家、大林宜彦逝去のニュースが!
※新型コロナウィルス感染拡大状況ならびに新型コロナウィルス感染症対策本部において示された方針等により公開延期となった
❝眠るのは死んでから充分眠れるのだから眠るなんて勿体ない❞
を口癖に、
撮影現場での〆の決まり文句
❝皆さん、ありがとう❞
を遺言として…
という「いかにも大林宜彦監督」イメージそのままのコメントを寄せられた監督作品のプロデューサーにして、文学と音楽と映画の日々を63年、共に歩まれた恭子夫人が報道関係に向け、配信されたレターの一部をご紹介したく思った次第。そして更に付け加えるなら、
「ロケハンの途中の天国村で、馴染みの顔ぶれと再会し、映画談義が尽きることなく、やっぱり眠っていないのでは…」というくだり。
おそらくきっとそうであるに違いない!(笑)
というわけで在りし日の夫妻の思い出の1枚と共に開幕の「オウチでシネマパラダイス?!<その3>」。
まずは残念ながら遺作となった『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の話題から。
82年に発表した『転校生』を皮切りに、『時をかける少女』、『さびしんぼう』と合わせ、監督の故郷かつ創作の原点でもあった広島県尾道市への愛を込めた❝尾道三部作❞。
大林ワールドのみならず、小津安二郎監督の代表作『東京物語』をはじめとする映画、ドラマ、アニメの聖地としても知られ、また最近では「しまなみ海道サイクリングロード」でも注目を集めている。
そんな尾道と20年ぶりのコラボとなる本作。その「誰も体験したことがエンタテインメント」とはいかに?
物語は閉館を迎えた尾道の海辺にある唯一の映画館「瀬戸内キネマ」が舞台。
その最終日のプログラム「日本の戦争映画大特集」オールナイトでの上映中、突然、劇場を襲った稲妻の閃光に包まれた観客の青年3人が、なんとスクリーンの世界へとタイムスリープ!?
江戸時代から昭和へと戦争の歴史の変遷に伴い、映画の技術も白黒サイレント、トーキー、アクション、ミュージカル、カラーへと次々進化を遂げていく中、彼ら3人が運命的出会を果たす移動劇団「桜隊」に所属するヒロインたち。
やがて舞台は原爆投下前夜の広島へと移行し…
その結末は劇場公開までしばしお待ちを!
なお、是非とも多彩で豪華なキャスティングもお見逃し無きよう。
たとえば即座に判明する高橋幸宏や浅野忠信、また稲垣吾郎や手塚眞といったボーダレスな分野から集結し、銀幕をカラフルに彩っている。
きっとそこにも「誰も体験したことがエンタテインメント」の秘密のキーワードが潜んでいるのかも…
近日公開
配給:アスミック・エース
©2020「海辺の映画館-キネマの玉手箱」製作委員会/PSC
さてここで少しばかり、大林監督にまつわる「トリビア」的話題をいくつか。
Uno>馬場毬男
前述の作品にも登場している主人公の青年の名前「馬場毬男」。そのネーミングにまつわるエピソードがある。
本作資料によると「3歳の時に活動写真機と戯れるうちに映画を造り始める」という記載があるほど、根っからのクリエイター魂が宿る監督の少年期を映画化したファンタジー・ドラマ『マヌケ先生』。
実はその主人公も同一同名だ。そこで少しばかり由来をリサーチしたところ、イタリアの映画監督、また撮影監督として名を馳せた「Mario Bava」だと判明!
なかなかユニークな当て字の発想力に再び感動した(笑)
Due>CM界の巨匠
テレビCM草創期のヒットメーカーとしても名を馳せ、作品数は3000本超というのだからビックリ!
その独創的スタイルの一つが国際色豊かな外国人スターの起用だったとか。その代表例として;
☑❝う~ん、マンダム❞
とつぶやくアメリカン人俳優、チャールズ・ブロンソンの名台詞。(「マンダム」)
☑❝ラッタッタ❞
というラテン的発音のキャッチフレーズと共に登場したのはイタリアの太陽的女優ソフィア・ローレン(偶然にも、今月の「オウチでシネマパラダイス」シリーズ初回のヒロインの一人)。(「ホンダ・ロードパル」)
☑カトリーヌ・ドヌーヴ×フランシス・レイ
ドヌーヴ(同じく「オウチでシネマパラダイス」シリーズ初回、そして前回の連続2回登場)が演じ、楽曲「La Fontaine」をレイが担当という贅沢なコラボ。
・・・と、まだまだ話題は尽きないのですが、そろそろこの辺りで大林監督の「思わぬイタリアン・シネマの余韻」で、締めくくりを飾りたく!
一昨年から昨年にかけて取材に出向いたローマにて、ファッションの専門学校「アカデミア・コストゥーメ・エ・モーダ (以下、ACMと略)」を訪れたことがある。
近年では、グッチのクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレの学び舎としても知られ、服飾にまつわる様々なジャンルで国際的に活躍する人物を輩出し、日本人留学生も少なくないという。筆者も偶然、現地でシューズ・デザイナー志望の関西出身の学生と対面した。
そうした中、当「CINEMATIC JOURNEY」としてはやはり、映画業界でグローバルに活躍するコスチュームデザイナーにも注目したく!そこで今回はStefano De Nardisについて、少しばかり新作関連の情報共有を下記に。
映画はもとより、テレビドラマなど幅広く活躍している彼は、007シリーズの『スペクター(Spectre)』に続き、昨年末に当コラムでも紹介した新作『ノー・タイム・トゥ・ダイ(No Time to Die)』、同じく『キングスマン』シリーズの新作『キングスマン:ファースト・エージェント(THE KING’S MAN)』の各イタリアロケにおいてコスチュームスーパーバイザーを務めている。
当コラムにおいてもしばしば話題に上る、シネマと衣装の相乗効果は、やはり「濃厚!」な関係にあると常々通感している。
そうした基本的学習の場もグローバル化が進む中、前述のアカデミー「ACM」では、オンラインでの入学試験や、webinarを導入したマスターコース(英語での開講)など「DISTANCE LEARNING ACTIVITIES」の充実を図っているという。
参考までに、「Academic Master -The Art & Craft of the Costume Designer」コースは、60パーセント以上が海外からの生徒とのこと。もちろん日本の学生も多々いるそう。
「オウチ時間」の新たな過ごし方となりそうだ。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中