オールドノーマル(?)な時代なら、夏フェス真っ盛りな季節が到来。
なのですが…時はニューノーマル!
音楽を共に体感する機会は、様変わりしつつある気配。
そうした中、渋谷の新ランドマークとして注目の「MIYASHITA PARK」内に出現した「ルイ・ヴィトン 渋谷メンズ店」。
そのウィンドーディスプレーに、つい目が釘付けになり、立ち止まる老若男女の姿を目撃することしばしば。なぜなら、ウィンドーのみならず店内正面などに点在するアート&クールなマネキンたちのポージングは、まさに音楽の香りがするから。
彼らはどんな楽曲をプレーしている想像してみたくなる。(7月27日までオンライン事前予約)
ご存じの通り、メンズのアーティステック・ディレクター、ヴァージル・アブローはDJの顔も持つ、マルチタレントな人物。よって当然のことながら音楽への造詣の深さは折り紙付き。
その裏付けとして、是非ともチェックして頂きたいのが、ルイ・ヴィトン初のプレイリストと称されたヴァージル選曲によるMUSIC JOURNEY!
曲のバリエーションの豊かさ同様、彼の才能の奥行にトキメキを感じずにはいられない。
ちなみに7月10日より公開の2021春夏コレクションのプレリュードとなるデジタルフィルム 「Message in a Bottle (瓶詰の手紙)」。その監督ならびに音楽監督も、もちろんヴァージルが担当している。
個人的には、このタイトルを目にした際、頭の中でリンクしてしまったのが、ポリスとして活動していた若かりし日頃のスティングたち3人が、ノリノリでプレーしていた同名の曲。
『孤独のメッセージ』という邦題が、懐かしく思い出される方も少なくないのでは?
というわけで7月後半の「CINEMATIC JOURNEY」は音楽をキーワードに、旅してみたいと思います!テーマは「ヴァージル、カエターノ&キノ!?」。
それでは早速、現在公開中のブラジル映画『ぶあいそうな手紙』から。
ブラジル南部の街、ポルトアレグレを舞台に展開する本作の主人公は、78歳という老境を迎え、視力を失いつつあるウルグアイ出身の独居老人エルネストと、23歳の風変わりなブラジル娘ビア。
見ず知らずの2人が偶然出会い、「手紙の代読と代筆」を依頼することから紡がれていくユニークで温かな絆。ストーリー展開と粋な選曲が心地よいハーモニーを奏でる作品だ。
手紙を書くという行為が日常から消えつつある近年。
今回の緊急事態宣言中に届いた、何通かの絵葉書でも目にしたことのある、直筆による温もり感あふれる文字や言葉が持つ力。そんな感動を実感するのではないだろうか?
続いて登場するのがブラジル音楽界の雄、カエターノ・ヴェローゾの話題。
筆者もラジオ番組制作者時代に彼の曲を聞き、透明感あふれる歌声に魅了された一人だが、彼のファン層はグローバルかつ、幅広いジャンルの人物に及ぶという。
とりわけ忘れられないのがイタリア人デザイナー、ロメオ・ジリも彼のファンの一人だったことを記憶している。確か90年代のミラノで開催されたコレクションのソングリストにも、カエターノの曲を使用されていたようなおぼろげな記憶が...
また映画界でもペドロ・アルモドバル監督(『私の秘密の花』『トーク・トゥ・ハー』)をはじめ、『フリーダ』など50作近くのサウンドトラックに曲が収録されているそうだ。
本作でも是非、カエターノの歌声をご堪能あれ!
公開中のシネスイッチ銀座につづき、以降7月31日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国順次ロードショー
© CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019
「ヴァージル、カエターノ&キノ!?」をテーマに巡る今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
ゴールは80年代初頭のソ連時代へとタイムトラベル。
レニングラードを舞台に、極上のロックミュージックと、スタイリッシュなモノクロの映像が画面を彩るロックファン必見の一作『LETO -レト-』をご一緒に!
❝第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、カンヌ・サウンドトラック賞最優秀作曲家賞を受賞❞
と聞けば、より「音楽に対するチカラがある作品なのだ」と、納得がいくことと思う。
そのストーリーは、ロシアの国民的かつ伝説的ロックバンド「kino(キノ)」の創設者で、「ロックの最後の英雄」と称えられるヴィクトル・ツォイのデビュー時期の実話がベースだという。
自由と音楽、ほのかに香るロマンスもアクセントとなり、日本では情報を得る機会があまり多くなかったロシアン・ロック&カルチャーの一端を垣間見ることができる興味深い作品だ。
間もなく彼の突然の事故死(90年8月15日)から30年を迎える。
ここで本作の最たる魅力と言っても過言でない、名だたるアーティストによる「MUSIC LIST」について、個人的思いも添えつつ少しばかりご紹介を。
まずは、本作の主要登場人物となる2人のミュージシャン、ヴィクトル・ツォイのバンド「キノ」と、彼を見出しサポートしたマイク・ナウメンコの「ザ・ズーパーク」の楽曲はもちろんのこと。
T・レックス、トーキング・ヘッズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、イギー・ポップ、ルー・リード、そしてデヴィッド・ボウイにモット・ザ・フープル。
また随所に登場する当時を象徴するバンド名の数々。
たとえばセックス・ピストルズやデュラン・デュラン、そして私が大好きな曲の一つ『ハート・オブ・グラス』を歌うデボラ・ハリーがセクシーなバンド、ブロンディなどなど。
ある種の夏フェス気分を満喫できる作品とも言えそうな!?
7月24日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
©HYPE FILM, 2018
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中