今月11日(水)~15日(日)までの5日間にわたり、イタリア・ローマで開催された映画祭『ファンタ・フェスティバル』。
1981年から毎年開催されているイタリア最古のファンタ系映画祭だと、このほど初めて知った。40周年の今年、栄えある最優秀作品賞を受賞したのは、なんと日本の作品だった。その受賞作とは…
世界的に著名な漫画家&アニメーション作家、手塚治虫が手掛けた大人向け漫画『ばるぼら』(映画も同一名称)を、ヴィジュアリスト&映画監督として活躍の手塚眞が挑んだ、記念すべき父子コラボ映画の誕生と言える。
そのチーム構成にも注目が集まっている。
まず主役を演じるのは、それぞれ独自のファッション美学が香る稲垣吾郎と二階堂ふみ。
そして撮影監督には、各国の名だたる映画祭で数々の受賞に輝くクリストファー・ドイル。
また「扮装統括」というユニークな肩書を務めたのは、「作中のキャラクター像を総合的に生み出す『人物デザイン』」という新たなジャンルの開拓者こと、柘植伊佐夫。
ほか各ジャンルの才能あふれる人物が集結した。
今月20日より公開になった本作。
その翌日に開催された公開記念ライブビューイング舞台挨拶では手塚監督を筆頭に主演の2人、「SAINT LAURENT」をクールに着こなす稲垣吾郎と、「ETHOSENS×ばるぼら」的スタイリングの二階堂ふみ。
監督から贈られた各々のイメージに合ったブーケは、あたかもアクセサリーのごとく、それぞれの衣装と絶妙なハーモニーを奏でているようにも感じた。
なおそしてクリストファー・ドイルは、上記のごとくメッセージでの参加となった。
ここで少しばかり、ライブビューイングでは知り得なかった本作の魅力の一端をシェアしたく思う。
☑メイクと衣装は99年の公開作『白痴』(ヴェネチア国際映画祭・デジタルアワード受賞)でも組んだことのある、柘植伊佐夫に相談しようと考えていたという手塚監督。
その矢先、とあるパーティで偶然の再会を果たし、更なる偶然が重なったという。
まさに運命のエピソードともいうべき内容が…
「やってみたい原作があるのですが、映像化の話はありませんか?」と語る柘植が想い描いていた作品が、驚くことに『ばるぼら』だった!
という訳で、チーム「ばるぼら」の順調に進行していったとのこと。
☑監督はコスプレになることを恐れ、ヒロイン「ばるぼら」の衣装やスタイルを原作から切り離すことを想定していた。が、『翔んで埼玉』でもタッグを組んでいた柘植×二階堂チームは、原作のままのスタイルを提案。その結果、原作のままとなった。
なぜなら衣装合わせ時の、ヒロインに扮した二階堂のスタイリングが「ばるぼら」のイメージそのものだったとか。
ちなみにダンスをするクラブのシーンを含め、スクリーンに登場する衣装の数点は彼女の私服を使用しているとのこと。
☑ヒロインの母親を演じる渡辺えりには、特殊メイクでの演出を想定していたのだが、不要となった。
監督のイメージ通り、彼女の女優魂をスクリーンで目にすることになるだろう。
最後に、プエルトリコで開催されたLUSCA国際ファンタスティック映画祭でも、本作が監督賞を受賞したとの速報を耳にしたばかりだ。
シネマート新宿、ユーロスペースほか全国公開中
Ⓒ2019『ばるぼら』製作委員会
「注目の映像『美』ナウ‼ 手塚眞&ヘルムート・ニュートン」をテーマに巡る、今回の「CINEMATIC JOURNEY」。次のシネマの移る前に、シネマ「+α」な話題を。
これまでにもしばしば寄り道的話題として登場している、エンドロールのチェック。
今回も前述の『ばるぼら』にて、作品の美的テイストにも通じるコスメ関連をテーマに見つめていたところ、コロナ禍における意識調査のデータ集計で注目しているブランド『カバーマーク』の文字を発見。
例えば、今年3月に行われた「加工アプリに関する意識調査」では、20~30代の2人に1人が写真加工アプリを使用。その主たる目的が「肌」の加工なのだそう。またアプリ使用者の6割は「現実の肌がキレイなら、加工や編集をしたくない」という本音も。
オンラインミーティングなどが主流になりつつある現代、かつての女優肌への憧れからアプリ肌へ!意識の変遷を実感する!
と同時に必須アイテムとなったマスク生活に伴う肌トラブル。その悪化の原因となるのは「肌の摩擦」だそう。とりわけメイクをした肌は、擦らず「落とす」クレンジングがポイントだと皮膚科専門医は語る。
おそらく撮影現場でも、俳優たちへのスキンケアは必須なのだろうと、想像を膨らませた次第。
という訳で、「注目の映像『美』ナウ‼ 手塚眞&ヘルムート・ニュートン」をテーマに巡る、今回の「CINEMATIC JOURNEY」。フィナーレを飾るのは『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』。
『HELMUT NEWTON THE BAD AND THE BEAUTIFUL』という原題がインパクト大な本作は、ファッション・フォトグラファーとして活躍したヘルムート・ニュートン生誕100周年を記念して制作されたドキュメンタリーだ。
❝彼との初仕事はデヴィッド・リンチとのショット❞
と語る、女優イザベラ・ロッセリーニの思い出の1枚でもある上記画像。
また、『愛の嵐』でニュートンがスチルマンとしてヌードを撮影したシャーロット・ランプリングいわく、
❝彼に写真を撮られると、パワーがみなぎって来る❞
個性的ルックスと、抜群のプロポーションを誇るモデルとしてキャリアに加え、シンガーとしての活動も注目のグレイス・ジョーンズの下記、コメントの一部にも巨匠の情熱が宿っている。
❝写真の中に物語が流れている❞
さらに
❝次世代の女性の姿 それは彼の写真のなかにある❞
という言葉を残した故カール・ラガーフェルドにより「シャネル」のミューズ的存在としても活躍した、90年代を代表するスーパーモデルの一人、クラウディア・シファー。
また写真家としても活躍するジューン・ニュートンのコメントには、生涯にわたり良きパートナーとして人生を共有してきた者だからこそ知り得る素の姿を垣間見る。
❝写真は彼の生きがい、執念なの❞
総勢12人の縁ある女性たちと共に巡る、ヘルムート・ニュートン作品の新たな旅に乞うご期待!
12月11日(金)よりBunkamuraル・シネマ、新宿ピカデリーほか全国順次公開
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中