しばしば目や耳にする機会がある「オスカー俳優」という表現。
ご存じの方も多いとは思うのですが、先日発表になった世界的映画賞の一つ「アカデミー賞」受賞者に贈られる、賞の名称を刻印した彫像「オスカー像」に由来しているとのこと。
そして今年、「2度目のオスカー確実では」と注目度が上昇する中、その予想が的中!
めでたく『ファーザー』で主演男優賞に輝き、オスカーを手にしたのがイギリスの名優アンソニー・ホプキンス。
2012年のパリで幕を開け、ロンドン、ニューヨーク、そしてここ日本を含む世界30ヵ国以上で上演され、絶賛されたという舞台の映画化である本作。
そのオリジナル戯曲「The Father」の劇作家、そして小説家でもあるフロリアン・ゼレールが、自ら脚本&脚色(withクリストファー・ハンプトン)、さらに初の長編映画監督も務めた記念すべき作品が、なんと脚色賞でもオスカー獲得という快挙を成し遂げた。
認知症という大きなテーマのもと、その症状を共有するがごとく父(ホプキンス)の視点から描かれ、また一方では「オスカー女優」(『女王陛下のお気に入り』で主演女優賞)」ことオリヴィア・コールマンが演じる、父と娘の切なさと苦しさが同居する心情からも物語は紡がれていく。
❝私は父を演じたのです❞
と語るホプキンスのインタビュー映像など、充実した内容の本作公式サイトも劇場での鑑賞前後に是非ともご覧あれ!
5月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー
© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020
今という世相を反映した話題で開幕した5月最初の「CINEMATIC JOURNEY」。
今回は、「UK&GENTLEなメンズに注目!」をテーマに、つかの間の旅をご一緒したく。
次の作品に移る前に、前述の作品にも関連する時代のキーワード「脳と記憶」にまつわる話題について少しばかり。
なぜならデイヴィッド・バーン×スパイク・リーによる近日公開予定の新作『アメリカン・ユートピア』のオープニングは、プラスチックの脳を携えたバーンの登場が実に意味深で、かつまた人間の脳の進化にまつわる話題も衝撃的!
ちなみにバーンもまた今回のテーマ「UK&GENTLEなメンズに注目!」の一人。
また偶然にも上記の試写と同時期に開催された、目下主流となっているオンラインによるプレス発表会がある。それは、世代に関係なく興味あるテーマの一つとして掲げられる、食と脳の相関関係と称すべき研究に取り組んでいる「キリン脳研究」の近況報告的機会だった。
「食から脳の健康を守り、新たなよろこびを生み出す」べく研究開発を続ける中、新たに発表された内容とは;
☑大学や自治体との脳科学研究から得た知見を生かし、開発されたという無料の脳トレアプリ「KIRIN 毎日続ける脳力トレーニング」
☑「世界初!」と称される記憶力(手がかりをもとに思い出す力)の維持に役立つ独自素材『βラクトリン』(カマンベールチーズなどの乳製品に含まれる有効成分)の発見
いずれも感銘を受けるとともに、その背景に宿る研究者たちの情熱に感動と声援を送り続けたい。
さて、オープニングの作品「ファーザー」から「脳と記憶」という今注目すべき話題へと寄り道に興じた後は、再び今回の「CINEMATIC JOURNEY」のテーマ「UK&GENTLEなメンズに注目!」そのものズバリなゴール、映画『ジェントルメン』へ…
ガイ・リッチー監督作と聞けば、思わずファッション性と音楽や台詞など「リッチー・スタイルが香る脚本に違いない」といったイメージがある。
そして鑑賞後、思わず「ニヤリ」としてしまう方も少なくないかと…
そこで本作ならではのリッチー流儀の一部を、プレス資料などをベースに、下記にいくつかピックアップしてみたい。
本作の衣装デザインを担当したのは、ディズニー・アニメ実写版『アラジン』でもリッチー監督と共に素晴らしいチームプレーを披露したマイケル・ウィルキンソン。
❝ガイは都会的で典型的な英国風スタイルを求めていた❞
と語る彼。それらは各役柄の個性を強調しつつも決して誇張しすぎないスタイリングだったという。
例えば上の2枚の画像(場面写真と衣装スケッチ)は、主演のマシュー・マコノヒーのスタイリングの一例。
☑英国風トラディショナルな仕立てとモダンなデザインのオーダーメイドのスーツを発注。
☑ウールやカシミア、そしてシルクのラグジュアリーな素材
☑柄はウィンドウペンチェック、プリンス・オブ・ウェールズ
その極上の着心地の良さに、マコノヒーは何着か持ち帰ってしまったとか。
❝彼の映画にはリフがあるんだ。ジャズのようにね❞(プレス資料より引用)
と語るのは、コリン・ファレル。(画像上)
ちなみに彼と彼が率いる集団のために、ストリートウエアやスポーツウエアのテイストをプラスした4種類のオリジナルデザインのトラックスーツを作成したという。
そのこだわりがすごい!
英国風のスーツ用生地をモダンなキルト地にし、さらにプリントを施したというのだから。
一方、スタイリングの決定打になったのは、グレーともパープルとも表現し難いカラーレンズが絶妙な「レイバン」のウェイファーラー・サングラスだったという、映画好き私立探偵役のヒュー・グラント。(画像下)
そのイメージモデルは、1970年代の偉大な映画監督たちだったとか。
❝ガイの台詞は示唆に富んでいるし、すごく大胆だ❞(プレス資料より引用)
と語るグラントは、フェデリコ・フェリーニや面識のある私立探偵を参考に演じたそう。
キャストたちも大絶賛の味わい深い台詞の数々は、時に詩的で、音楽のようなリズム感…
That's the Guy Ritchie’s world!
5月7日(金)より全国ロードショー
© 2020 Coach Films UK Ltd. All Rights Reserved.
P.S.> 最後にもう一人「UK&GENTLEなメンズに注目!」な人物をご紹介したく。
ロンドンを拠点に活躍するキュレーター、マチュウ・コプラン(画像下)による日本で初めての展覧会
「エキシビジョン・カッティングス」が7月18日まで「銀座メゾンエルメス フォーラム」にて開催している。(緊急事態宣言に伴い、4月25日より当面の間、臨時休館。最新情報はサイトにて)
今、このタイミングを見計らっていたかのような内容の本展は、新たな展覧会の体験や知覚へのチャレンジともいうべき、偶然かつ必然な先進的スピリットが宿っている。
とりわけ当「CINEMATIC JOURNEY」的興味の焦点となるのが、ドキュメンタリー映像作品《The Anti-Museum: An Anti-Documentary》。1964年の東京、1967年のアルゼンチンなど、アーティスト自らの決断において展示を閉鎖した歴史の一端に触れることができる、貴重なフィルムを目にすることができるだから!
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中