新旧美学の融合(宇佐美浩子)

2023/01/30 06:00 更新


さまざまな世界的状況に伴い、目覚ましい進化を遂げる生活様式。またその一方では、アップサイクリングを筆頭に、新旧美学の融合的スタイルが幅広い層に定着している感がする。

だからこそ今、前回のテーマにも掲げた「シネマ『愛』」同様、新鋭とレジェンド的存在のベストマッチングが、ある種の新鮮さと感動を呼んでいると思う。

そんな気分とリンクする「Bravo!」(と撮影中に主演俳優の一人が連呼したというデータあり)なショートムービーに出会った。

主演カトリーヌ・ドヌーヴ&ラミ・マレック。監督ガイ・リッチー。

GREG WILLIAMS © Cartier

豪華なトライアングルにより完成した本作は、シネマへの「愛」(ヴェネツィア国際映画祭のメインスポンサーとして現代映画制作の支援など)にあふれるメゾン「カルティエ」のグローバルキャンペーン用の映像!

その主役は1996年に発表されて以来、多くの人々を魅了し続けるウォッチ「タンク フランセーズ」の最新コレクションだった。永遠のパリジェンヌ、ドヌーヴのスタイリングは、やはり「フランセーズ」そのもの。

GREG WILLIAMS © Cartier

というわけで1月終わりの「CINEMATIC JOURNEY」は、「新旧美学の融合」をテーマにパリジャン、フランソワ・オゾン監督の注目作『すべてうまくいきますように』で心の旅を!

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「スタイリッシュで、ヒューマン」という、一見相反するかのように感じる表現が、筆者のイメージするオゾン監督の魅力ではないかと思っている。

本作も同様に、オゾン組の一人とも称したい名女優シャーロット・ランプリングのメタリックシルバーな演技。また監督と同世代、そして共にパリっ子。なおかつ監督念願の夢のコラボが遂に結実することとなったヒロイン、ソフィー・マルソー。

彼ら美しき母娘役に加え、本作の要となるテーマ「尊厳死」を臨む父親役を体現するアンドレ・デュソリエ。高齢化社会の中で直面する親子の心象風景を、独自のタッチで見る者に感動の問いかけを与えてくれる。


スクリーンの中で、また日常生活においても実感する年輪が形成する美学。本作の様々なシーンで表情豊かに演じるソフィーの過去と現在の愛らしい笑顔。そのプロセスを思いめぐらしてみたくなった。

一方、作りこまれたルックスで、ソフィーとは異なる輝きを本作に与えてくれる父親役に挑んだアンドレ。彼の役者魂にも拍手を送りたい人は多いはず。

そして『まぼろし』『スイミング・プール』などオゾン監督と数々の脚本を共同執筆され、今は亡き、本作の原作者エマニュエル・ベルンエイムにも…


『すべてうまくいきますように』

2月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 他公開全国公開
配給:キノフィルムズ
© 2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES


「新旧美学の融合」をテーマにフレンチシックな小旅行の締めくくりは、5つの旅先をイメージした香りと共に楽しむ、1735年創設のイタリア・フィレンツェの名窯「GINORI 1735 (ジノリ1735)」のポップアップイベントの話題を少しばかり。

2月12日(日)まで、ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店にて開催中の当イベントは、アーティスト、デザイナー、コラムニストの顔を持つルーク・エドワード・ホールとのコラボレーションにより、彼が愛するコッツウォルズ(英国)、マラケシュ(モロッコ)、ラジャスタン(インド)、ビッグ・サー(アメリカ)、ヴェネツィア(イタリア)をイメージし、昨年発表したフレグランスキャンドルなどで構成される「PROFUMI LUCHINO」を中心に、つかの間の旅する夢時間が広がる。

ちなみに筆者も日々、コッツウォルズのキャンドルの灯を亡き父に…

ともあれ2023はリアルな旅の再開を期して!


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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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